天然キャラとして知られる永野芽郁(写真/時事通信フォト)
そんな2人の共通点として、先述したように朝ドラでヒロインを務めてきたことが挙げられる。戸田は『スカーレット』でたくましいヒロインを演じ、永野は『半分、青い。』でおてんばなヒロインを演じた。前者は昭和期を舞台に自立した女性像を打ち出し、後者は現代を舞台に“いまどき”な若者像を体現したものだったと言える。
朝ドラといえば、幅広い視聴者層を得ている“国民的ドラマ”なだけに、そのヒロインを演じる彼女たちもまた“国民的ヒロイン”と言えるだろう。半年に渡って放送される朝ドラで1つのキャラクターを長期間演じることは、俳優としてのスキル獲得にも繋がるし、広く多くの視聴者の目に触れることで、良くも悪くも役のイメージが俳優本人のイメージとして世間に定着する。そのイメージを覆すのが俳優という職業だが、イメージが定着することは、見方を変えればずばり“ハマリ役”の証でもある。長期間同じ役を演じられる者にだけ与えられた特権だ。
両者が朝ドラで得た“ハマリ役”の要素が、今作『ハコヅメ』で2人が演じる役に上手く反映されていると思う。特に、戸田の存在があるからこそ、永野の天然なおてんば具合がより浮き彫りになり、永野の存在があるからこそ、戸田の凛とした佇まいがより際立っている。この関係性が本作最大の魅力だ。朝ドラで培った得意とする役どころに扮した“国民的ヒロイン”のタッグとなれば、これほど強力なドラマの看板は無いのではないだろうか。視聴率もV字回復しているいま、ますます応援したくなるコンビである。
【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。