芸能

夜の街・銀座を知らしめた映画『夜の蝶』 上り調子だった日本を追体験

『夜の蝶』は元気だったニッポンの映し鏡(写真はイメージ)

名作『夜の蝶』に映し出された銀座とは(写真はイメージ)

 朝まで飲み明かす男たちが街から消え、活気を失った銀座。コロナ禍で街の表情はすっかり変わってしまったが、日本一の繁華街を漂う“夜の蝶”たちは懸命に踏ん張っている。そんな夜の蝶たちを描いたのが、京マチ子と山本富士子のW主演の名作『夜の蝶』。映画ライターのよしひらまさみちが同作を論じる。

 * * *
 映画やドラマになった『愛染かつら』の原作者である川口松太郎のベストセラー小説『夜の蝶』。1957年に映画化されたことで、高度成長期のフィクサーたちが足繁く通う夜の街・銀座を知らしめ、そこを華麗に飛び回るバーの女性たち=「夜の蝶」や「ホステス」という言葉が流行するきっかけとなった作品だ。

 政財界や文壇の著名人が常連の高級バー・フランソワを営むマリは、名実ともに銀座のトップマダム。だが、京都の元舞妓・おきくが自身の名を冠したバーを開いたことで、彼女の天下は揺らぐ。

 銀座では新参者のおきくだが、舞妓の衣装と京ことばで接客する女給たちの雰囲気づくりで、フランソワとの客の奪い合いが始まる。しかも、おきくはマリの元夫の愛人だったばかりか、腕利きの女給仲介業者を雇ってマリの店からホステスを引き抜き、因縁は深まるばかり。そのバトルのさなか、関西の百貨店社長が東京出店のため、銀座に顔を出すようになったことで2人の対立は激化する。

 一流しか知り得ない華やかな夜の社交場と、そこを取り仕切るマダムの気高いプライドを、ネオン輝く銀座の実景とともに描き出した本作。「エスポワール」と「おそめ」という実在したバーとそのマダムたちのライバル関係がベースとなっていたことも、当時の話題になった。

 しかもW主演の京マチ子と山本富士子は大映の2大看板女優。彼女らが男たちを利用した裏工作と舌戦で火花を散らすさまは、「夜の蝶」の存在自体がエンタテインメントであるということを印象づけるきっかけに。それは一昨年に上演された新派の舞台版でも踏襲されており、女同士のバトルが本作を語るうえでは欠かせないものとなっている。

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン