保険金支払いの高額化、1兆円超えも
一般社団法人 日本損害保険協会が公表している「過去の主な風水災等による保険金の支払い」(別掲表1)をみてみよう。これまでに起きた“支払保険金ワースト10”の風水災のうち、7つが2014年以降に発生した災害だったという。
特に近年、首都圏や関西圏を襲った台風による被害が大きく、保険金の支払いが増えたものとみられる。
平成30年の台風21号では、支払保険金の額がなんと1兆円を超えている。今後もさらに大きな水害が発生すれば、それに伴って保険金支払額も高額化するものとみられる。
巨大洪水では「国家予算の6割」に相当する被害想定
それでは、実際にどのような水害が起こることが想定されているのか? さまざまな自然災害関連の研究機関や学会が、各種の前提のもとで被害想定を試算して公表している。
その中で、公益社団法人 土木学会は3大都市圏で巨大洪水や巨大高潮が発生した場合の被害想定を公表している(※注)。その内容をまとめた「3大都市圏 巨大洪水・巨大高潮被害想定」(別掲表2)をみてみよう。
※注/出典:「『国難』をもたらす巨大災害対策についての技術検討報告書」──レジリエンス確保に関する技術検討委員会(平成29年度会長特別委員会)2018年6月
まず、巨大洪水について。3大都市圏は、いずれも広大な低平地を抱えており、巨大洪水が起これば、深刻な浸水が広域で発生するものとみられる。
東京圏では、荒川の右岸21km地点の決壊を仮定。建築物などの資産被害が36兆円。インフラ破壊による経済活動の低迷により、経済被害が被災後14か月で26兆円。それに伴う税収減で、財政的被害が同2.8兆円出るとしている。また、人的被害として死者数を2100人と想定している。
名古屋圏では、庄内川左岸、木曽川左岸、長良川右岸、揖斐川右岸の破堤を仮定。資産被害は13兆円、経済被害は12兆円、財政的被害は1.3兆円としている。また、670人の死者が出ると想定している。
大阪圏では、淀川左岸9.2km地点の決壊を仮定。資産被害は6兆円、経済被害は7兆円、財政的被害は0.7兆円としている。また、200人の死者が出ると想定している。
このうち、東京圏では被害想定額が合計で64.8兆円に上る。これは、2021年度の一般会計当初予算(106.6兆円)の6割に相当する。ひとたび東京で巨大洪水が起これば、被害額は過去に経験したことのない巨額なものとなり得ることを示している。