ワシントン・ポストの現オーナーはアマゾンのジェフ・ベゾス氏(右端)。トランプ前大統領(左端)を厳しく批判し、当時のホワイトハウスは政府機関での同紙購読を禁じたほどだった(dpa/時事通信フォト)

ワシントン・ポストの現オーナーはアマゾンのジェフ・ベゾス氏(右端)。トランプ前大統領(左端)を厳しく批判し、当時のホワイトハウスは政府機関での同紙購読を禁じたほどだった(dpa/時事通信フォト)

「私をチームから外しただけではなく、編集首脳はデニヤ氏には引き続きセクハラ記事を書かせていた。『中国人女性たちのセクハラ被害の訴えが、家父長制や男性支配が続く共産党一党独裁下で押しつぶされている』と、自分の行為を棚に上げて正義の筆を振るっていたことが許せなかった」

 ソムネズさんは、当時の編集主幹や編集局長に対応の再考を求めたが、ソムネズさんの人事もデニヤ氏に対する処遇もそのままだったという。そして2020年、ソムネズさんは編集首脳を相手取った告訴に踏み切ったというわけだ。

 ちなみにデニヤ氏もソムネズさんも、アメリカきっての知日派ジャーナリストだ。デニヤ氏はロイター通信を経てワシントン・ポストに移り、インド、北京、東京支局長を歴任。東京では法政大学で教鞭もとった。一方のソムネズさんはハーバード大学卒業後、中国の名門、清華大学に留学。朝日新聞にアメリカの政治記事を寄稿していた。

 米主要紙の東京特派員のなかには意図的に嫌らしい反日記事を書く者も少なくないが、デニヤ氏は英国人エリートらしく、中庸を重んじて極めて公平な日本報道に徹してきた。東京五輪報道でも、「日本の納税者は観戦できないのに巨額の借金を背負う」とか、「五輪マジックはパンデミックの憂鬱を吹き飛ばしたが、東京五輪のレガシーはさらに複雑になった」といった冷静な分析が印象的だった。

 ソムネズさんは法廷闘争で一歩も引かない構えだが、日本人としては、支局長交代でワシントン・ポストの日本関連報道が反日に傾かないかも注目だろう。

■高濱賛(在米ジャーナリスト)

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン