東京の特殊性
お気づきだろうか。都立・私立合計で1965年は男子が17万1268名で、女子が16万2709名、1970年は男子が19万2249名で、女子が18万6098名と男子のほうがそれぞれ約8600名、約6200名も多い。
筆者の高校受験はこれよりさらに昔だが、当時は女子のほうが中卒で就職する人が多く、高校進学率は男子のほうが高かった。1965年、1970年と数字が縮まっているのは女子も上昇した事情と思われる。
当時は都立高校全盛時代であるから、男子は中学段階で私立に進むケースは少なかったが、区部では女子は私立に進むケースがそれなりにあった。実際、筆者の家もサラリーマンのごく普通の中流家庭であったが、妹は中学から私立に進んでいる。
こうしたことから、以前から都立高校の募集定員は男子のほうが多かったのである。それに加えてデータを見てお気づきのように、私立のほうが圧倒的に生徒数が多い。他道府県ではこんなことはあり得ない。しかも男子より女子のほうが私立の比重が大きい。
都立高校の募集定員が女子は少ないから結果としてこうなっているという意見もあるかもしれないが、受け入れ枠という視点からすると、私立は女子校のほうが男子校よりずっと数が多いので、可能だったという面がある。
東京都公私立高等学校問題連絡協議会では毎年生徒収容(生徒急増期にどうするか検討した時代の名称がいまだに使われていて、受験生にとっては印象がよくないが…)について話し合われている。
このときにベースになる数字は公立中学校3年に在籍する人数である。そもそもこれが、先に述べたように中学進学段階で私立に進んでいるのは女子が多いから在籍者数は男子のほうが多いのである。
これまでも、男女間の教育機会の均等をはかるという趣旨で、「男女別定員」は問題視されてきた。それで、普通科単位制、総合学科、専門学科などでは男女合同定員に、旧学区普通科の指定校も「男子300:女子100」から現行の「男子164:女子152」へと縮小されてきている。
これをすべて「男女合同定員」にしたとすると、都立と私立の比率は変わらなくても私立間の男女比は影響を受けると思われる。
このように歴史的経緯、家庭の志向、社会の変化、東京独特の事情等を考えていくと、「ジェンダー秩序」という観点からだけでは解決しないと思える。