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今も読まれる『失敗の本質』 「敗戦とコロナ失策」貫くパターンとは

会見する菅首相と尾身茂・政府分科会会長(時事通信フォト)

会見する菅首相と尾身茂・政府分科会会長(時事通信フォト)

 新型コロナウイルス感染拡大の中で、再び注目を集めている書籍がある。1984年にダイヤモンド社から初版が刊行され、その後、中公文庫に所収された『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(戸部良一/寺本義也/鎌田伸一/杉之尾孝生/村井友秀/野中郁次郎)だ。先の戦争(同書では「大東亜戦争」と呼称)における日本軍の諸作戦の失敗を分析した研究書である。

 同書の特徴は、組織論の観点から「日本はなぜ負けたのか」というテーマに切り込んだ点だ。日本軍という組織が抱えていた問題と、それがノモンハン事件(1939)、ミッドウェー作戦(1942)、ガダルカナル作戦(1943)、インパール作戦(1944)、レイテ沖海戦(1944)、沖縄戦(1945)の各作戦にいかに悪影響を及ぼしたかを分析している。

 40年近く前の刊行にもかかわらず、同書のKindle版、文庫版はコロナ禍においてAmazonの「軍事」「戦略・戦術」カテゴリなどで上位をキープしている。なぜ今、「大東亜戦争」についての研究書が再注目されているのか?

『失敗の本質』を読むと、戦争という一大事にあって意思決定が「ぐだぐだ」に進められていたことに驚くかもしれない。同書は、日本軍の犯したミスについて、「作戦目的が曖昧」「作戦指示の表現が曖昧」などと指摘している。その曖昧さを各々が自案に有利なように解釈した結果、事態が悪化した部分があるとされている。また、日本軍は平時の安定・均衡思考のまま戦争に突入してしまったとも主張している。

 これらは、『失敗の本質』で分析されたことのごく一部でしかないが、なんだか最近よく聞く話のように感じないだろうか。例えば、コロナ禍での政府の失策の数々だ。

 菅義偉首相は新型コロナウイルス感染症に関する会見で「あらゆる方策を尽くし、国民の皆さんの命と暮らしを守る」(1月13日の記者会見より)など強い言葉を発したが、結局、今夏の第5波を迎えても医療体制を整備しきれず、感染後に入院できないまま自宅療養中に急変して死亡する事例が相次いだ。

 また、第5波に対する緊急事態宣言などで国民に「外出自粛」「会食・飲酒制限」を求める一方で、東京五輪・パラリンピックが敢行され、「結局どうすればいいのか?」と混乱する声が噴出した。ある意味、国民ひとりひとりに解釈が委ねられるような状況になった結果、緊急事態宣言下でも人流はそれほど抑えられなかった。

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