「早く終わるレジン治療」の落とし穴
虫歯治療の主流は、銀歯からレジンに置き換わってきたが、問題も残っている。
保険の診療報酬が低いため、患者一人の治療にじっくり時間をかけられないという現実があるのだ。レジン治療1回では、1500円程度。
患者の立場からすると、治療時間が短くて、しかも費用が安いことは良いことに思えるかもしれないが、実はそこに落とし穴があった──。
「コンポジット・レジンの治療は、接着剤を歯の表面に塗ってから流し込みます。そして光を当てて固めるのですが、この時にレジンは収縮して体積が小さくなります。ですから幾層にも重ねるように、少しずつレジンを流し込んで光を当てる、という手順を繰り返すのが基本。これは、時間も手間もかかります。
この基本を無視して、手早くレジンを一度に流して光を当てると、固まる時の収縮が大きくて接着剤が剥がれてしまうのです」
手抜き治療で耐久性が下がる可能性があるのだ。
保険の“白い被せ物”はレジン治療の一種?
最近、保険適用されたのが、レジンとセラミックのハイブリッド素材のCAD/CAM冠。
大臼歯に被せる白い歯が1万円以下(3割負担の場合)なので、CAD/CAM冠を勧める歯科医も増えている。ただし、デメリットもあると田上氏は指摘する。
「CAD/CAM冠は、見た目が天然の歯と同じ色なので、好まれているようです。ただし、治療の技法としては銀歯と同様に歯を削る必要があるでしょう。場合によっては、銀歯よりも大きく削ることもあるので、レジン治療とは全く異なると考えてください」
レポート/岩澤倫彦(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2021年10月8日号