ライフ

虫歯治療を変えたレジェンドが説く「レジン治療」の誤解と落とし穴

レジン治療の普及に努めてきた東京医科歯科大学の前副学長・田上順次氏

レジン治療の普及に努めてきた東京医科歯科大学の前副学長・田上順次氏

 日本の虫歯治療を変えた、レジェンドというべき人が、東京医科歯科大学の前副学長・田上順次氏である(現・徳真会先端歯科センター長)。昭和生まれの世代にとって、虫歯治療といえば「銀歯」だったが、田上氏はその問題点を明確に指摘して、歯にとって最も影響が少ない「コンポジット・レジン」を提唱してきた。

「銀歯の問題点は、虫歯になっていない健康な部分まで削ってしまうこと。そうしないと、銀歯を嵌め込むことができないからです。

 ペースト状になっているコンポジット・レジンは、虫歯の部分だけを削り、そこに流し込んで光を当てて固めます(光重合)。これならダメージが最小限で済むので、歯の寿命も長くなる。世界的にも、ミニマルインターベンション(最小限の侵襲)という概念が歯科治療の潮流です」(田上氏)

 別掲のイラストは、比較的小さな虫歯治療のケース。銀歯はどうしても歯を削る量が大きくなってしまうのだ。

 かつてと比べると、銀歯は激減してレジン治療が主流になっているが、それでも銀歯にこだわる歯科医は少なくない。

 今年、厚労省が公表した保険診療の内訳をみると、比較的小さな虫歯治療の「インレー」では、1か月間に約44万件の銀歯が使用されていた。推計で、年間500万件超。同様の治療で、レジンは1か月間に約330万件あり、年間約4000万件と推計される。

 小さな虫歯でも銀歯を使い続ける理由、そこに日本の歯科治療の問題点が透けてくる。

「レジンは耐久性が低い」という誤解

 プラスチック系の素材であるレジンは、耐久性が低いというイメージが歯科業界の中で定着している。そのため、噛み合わせで強い力がかかる部分や、比較的大きな虫歯にレジンは使用できない、として銀歯を使い続けている歯科医がいるのだ。年齢が高い歯科医に顕著な傾向だという。

 これについて田上氏に尋ねると、自身のノートパソコンを開いて、ある患者の口腔内画像を見せてくれた(別掲の画像)。

「これは40年前、歯科医になりたての僕がコンポジット・レジンで治療した患者の画像です。昨日、たまたま友人の歯科医が送ってきてくれました。当時のレジンは今よりちょっと不透明な色合いですが、何も問題ないそうです」

 田上氏は基本に忠実なレジン治療をしただけで、特別な技法を使った訳ではないという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン