ライフ

すみだ北斎美術館【3】北斎84歳の再現模型に壇蜜「あっ、動いた!」

葛飾北斎『百物語 さらやしき』すみだ北斎美術館蔵 天保2-3年(1831-32)頃、錦絵、中判。皿屋敷伝説が題材。百物語シリーズは、現在5図確認されている(C)Forward Stroke

葛飾北斎『百物語 さらやしき』すみだ北斎美術館蔵 天保2-3年(1831-32)頃、錦絵、中判。皿屋敷伝説が題材。百物語シリーズは、現在5図確認されている(C)Forward Stroke

 日本美術応援団団長で美術史家・明治学院大学教授の山下裕二氏とタレントの壇蜜が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・墨田区のすみだ北斎美術館の第3回。2人は、絵に没頭する84歳の北斎の再現模型に驚かされる。

壇蜜:あっ、筆を持つ手が動いた! リアルだなぁ。

山下:絵に没頭する84歳頃の葛飾北斎です。すみだ北斎美術館・常設展示室の「北斎のアトリエ」再現模型は門人が絵に残した北斎の暮らしが模型で再現され、隣は娘の阿栄。「応為」の号で絵を描き、その画才は北斎も認めていました。榛馬場(はんのきばば)の住まいの様子です。

壇蜜:北斎は90回以上も転居した引っ越しマニアとして知られていますね。

山下:北斎は柳島妙見を信仰していたそうで、周辺をぐるぐると転居していました。妙見菩薩は北斗星を神化したもの。北斎は江戸っ子に馴染み深い富士山を多く描きましたが、『冨嶽三十六景』で山を様々な地から眺める視点から、富士山を不動の絶対的な存在として捉えていたのでしょう。

壇蜜:柳島妙見の思想と重なります。自身が何かの中心か、衛星の視点でものを作っていたのかな。まさかこれほど小さな空間から森羅万象を描いていたとは。

山下:描いた絵のサイズも小さいのにその世界は膨大に広がっていく。これほどスケールの大きい画家というのもいないと思います。

壇蜜:漫画の始祖的存在であり、花鳥画、錦絵、肉筆画などジャンルも広い。幽霊画の『百物語 さらやしき』はお皿で体ができている奇抜なお菊さんです。

山下:蛇のような独創的な表現が北斎の奇想ですね。

壇蜜:小さな世界でも想像できることは無限大なんだと、北斎に学びました。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)

●すみだ北斎美術館
【開館時間】9時半~17時半(最終入館は閉館30分前まで)
【休館日】月曜(祝日、振替休日の場合は翌平日)、年末年始
【入館料】AURORA(常設展示室)400円 ※企画展は展覧会により異なる
【住所】東京都墨田区亀沢2-7-2

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年10月8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

鮮やかなロイヤルブルーのワンピースで登場された佳子さま(写真/共同通信社)
佳子さま、国スポ閉会式での「クッキリ服」 皇室のドレスコードでは、どう位置づけられるのか? 皇室解説者は「ご自身がお考えになって選ばれたと思います」と分析
週刊ポスト
松田烈被告
「テレビ通話をつなげて…」性的暴行を“実行役”に指示した松田烈被告(27)、元交際相手への卑劣すぎる一連の犯行内容「下水の点検を装って侵入」【初公判】
NEWSポストセブン
Aさんの左手に彫られたタトゥー。
《10歳女児の身体中に刺青が…》「14歳の女子中学生に彫られた」ある児童養護施設で起きた“子供同士のトラブル” 職員は気づかず2ヶ月放置か
NEWSポストセブン
会談に臨む自民党の高市早苗総裁(時事通信フォト)
《高市早苗総裁と参政党の接近》自民党が重視すべきは本当に「岩盤保守層」か? 亡くなった“神奈川のドン”の憂い
NEWSポストセブン
知床半島でヒグマが大量出没(時事通信フォト)
《現地ルポ》知床半島でヒグマを駆除するレンジャーたちが見た「壮絶現場」 市街地各所に大量出没、1年に185頭を処分…「人間の世界がクマに制圧されかけている」
週刊ポスト
連覇を狙う大の里に黄信号か(時事通信フォト)
《大相撲ロンドン公演で大の里がピンチ?》ロンドン巡業の翌場所に東西横綱や若貴&曙が散々な成績になった“34年前の悪夢”「人気力士の疲労は相当なもの」との指摘も
週刊ポスト
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(インスタグラムより)
「バスの車体が不自然に揺れ続ける」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサー(26)が乱倫バスツアーにかけた巨額の費用「価値は十分あった」
NEWSポストセブン
イベント出演辞退を連発している米倉涼子。
《長引く捜査》「ネットドラマでさえ扱いに困る」“マトリガサ入れ報道”米倉涼子はこの先どうなる? 元東京地検公安部長が指摘する「宙ぶらりんがずっと続く可能性」
アドヴァ・ラヴィ容疑者(Instagramより)
「性的被害を告発するとの脅しも…」アメリカ美女モデル(27)がマッチングアプリで高齢男性に“ロマンス”装い窃盗、高級住宅街で10件超の被害【LA保安局が異例の投稿】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト・目撃者提供)
《ラブホ通い詰め問題でも続投》キリッとした目元と蠱惑的な口元…卒アル写真で見えた小川晶市長の“平成の女子高生”時代、同級生が明かす「市長のルーツ」も
NEWSポストセブン
韓国の人気女性ライバー(24)が50代男性のファンから殺害される事件が起きた(Instagramより)
「車に強引に引きずり込んで…」「遺体には多数のアザと首を絞められた痕」韓国・人気女性ライバー(24)殺害、50代男性“VIPファン”による配信30分後の凶行
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン