ライフ

さいとう・たかを氏の最後の肉声「ゴルゴの世界でコロナは描かない」

53年間走り続けた

53年間走り続けたさいとう・たかをさん

 日本の最長寿劇画『ゴルゴ13』作者のさいとう・たかをさんが亡くなった(享年84)。7月には単行本201巻が発売され、「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」としてギネス世界記録に認定された同作は、湾岸戦争やイラク戦争など現実の時事問題を作品に反映させてきたが、さいとうさんが最後まで悩んだのが「コロナを描くかどうか」だった。

 本誌・週刊ポスト(2021年3月26日号)で、コロナと表現様式についてさいとうさんはこう語っていた。

〈『ゴルゴ13』ではキャラクターの喜怒哀楽を「目」で語らせていますから、デューク東郷がマスク姿になって口元の動きに変化がなくなったとしても問題はありません。彼に追い詰められたキャラクターの心の乱れや恐れも同様なので、マスクをするかどうかによって作品の魅力が落ちるとは思っていません。

 ですが、ゴルゴの世界にコロナを反映させるつもりはありません。

 劇画の世界観に「リアリティ」をどの程度持ち込むかは、作家それぞれの考え方だと思います。私個人としては、世の中に振り回されすぎずに読者と向き合いながら、今まで通りに淡々と創作していくつもりです〉

 また、さいとうさんはこの時、劇画に求められる倫理観についても持論を述べた。

〈最近はタバコを吸うシーンを描くことなどに対して「倫理的によろしくない」という風潮もあります。今後こうした動きが行きすぎて、「マスクをしていない姿を描くとはけしからん」などとなることには反対です。私は倫理観というのは誰かが押しつけるものではないと思っています。読む人に夢を与えるのが劇画の役割だと考えているので、『ゴルゴ13』を世間の目ばかり気にした作品にはしたくはないのです〉

『ゴルゴ13』は、今後もさいとう・プロダクションや脚本スタッフなどが協力し、連載を継続することが発表された。

 独自の美学を貫く孤高の狙撃手・ゴルゴ13の活躍がこれからも楽しみだ。

※週刊ポスト2021年10月15・22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

眞子さんと佳子さま(時事通信フォト)
《眞子さん出産発表の裏に“里帰りせず”の深い溝》秋篠宮夫妻と眞子さんをつないだ“佳子さんの姉妹愛”
NEWSポストセブン
「子供のころの夢はスーパーマンだった」前田投手(時事通信フォト)
《ワンオペ育児と旦那の世話に限界を…》米国残留の前田健太投手、別居中の元女子アナ妻が明かした“日本での新生活”
NEWSポストセブン
宮内庁は小室眞子さんの出産を発表した(時事通信フォト)
【宮内庁が発表】眞子さん出産で注目が集まる悠仁さま成年式「9月ならば小室圭さんとともに出席できる可能性が大いにある」と宮内庁関係者
NEWSポストセブン
若松次郎を演じる中島歩(左)は歴史上のある有名人の子孫にあたるという(C)NHK連続テレビ小説「あんぱん」NHK総合 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
朝ドラ『あんぱん』ヒロインの“婚約者”を演じる中島歩は国木田独歩の玄孫 「中学と高校の国語教師の資格取得」に見える文豪の片鱗
週刊ポスト
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《第1子出産》“叱らない子育て”が育んだ小室圭さんと“プリンセス教育”を受けた眞子さんが築いていく“これからの教育方針”「佳代さんはトイレトレーニングもせず」
NEWSポストセブン
田中容疑者の“薬物性接待”に参加したと証言する元キャバクラ嬢でOLの女性Aさん
《27歳OLが告白》「ラリってるジジイの相手」「女性を切らすと大変なんだ…」レーサム創業者“薬漬け性接待”の参加者が明かした「高額報酬」と「異臭漂うホテル内」
週刊ポスト
「大宮おじ」「先生」こと飯田光仁容疑者(32)の素顔とは──(本人SNS)
〈今日は〇〇にゃんとキスしようかな〉32歳無職が逮捕 “大宮界隈”で少女への性的暴行疑い「大宮おじ」こと飯田光仁容疑者の“危険すぎる素顔”
NEWSポストセブン
明るいご学友に囲まれているという悠仁さま(時事通信フォト)
悠仁さまのご学友が心配する授業中の“下ネタ披露” 「俺、ヒサと一緒に授業受けてる時、普通に言っちゃってさぁ」と盛り上がり
週刊ポスト
ラウンドワンスタジアム千日前店で迷惑行為が発覚した(公式SNS、グラスの写真はイメージです/Xより)
「オェーッ!ペッペ!」30歳女性ライバーがグラスに放尿、嘔吐…ラウンドワンが「極めて悪質な迷惑行為」を報告も 女性ライバーは「汚いけど洗うからさ」逆ギレ狼藉
NEWSポストセブン
田中圭の“悪癖”に6年前から警告を発していた北川景子(時事通信フォト)
《永野芽郁との不倫報道で大打撃》北川景子が発していた田中圭への“警告メッセージ”、田中は「ガチのダメ出しじゃん」
週刊ポスト
TBS系連続ドラマ『キャスター』で共演していた2人(右・番組HPより)
《永野芽郁の二股疑惑報道》“嘘つかないで…”キム・ムジュンの意味深投稿に添付されていた一枚のワケあり写真「彼女の大好きなアニメキャラ」とファン指摘
NEWSポストセブン
2日間連続で同じブランドのイヤリングをお召しに(2025年5月20日・21日、撮影/JMPA)
《“完売”の人気ぶり》佳子さまが2日連続で着用された「5000円以下」美濃焼イヤリング  “眞子さんのセットアップ”と色を合わせる絶妙コーデも
NEWSポストセブン