ライフ

『ムショぼけ』元やくざ幹部の作家がリアルに描く「現代やくざの侘しき日常」

「元やくざ幹部」作家としても知られる原作者の沖田臥竜氏(撮影/名和真紀子)

「元幹部」の作家としても知られる原作者の沖田臥竜氏(撮影/名和真紀子)

 ドラマ化で話題の小説『ムショぼけ』は、14年ぶりに刑務所から戻ったやくざが主人公。組からの約束を反故にされたうえ破門された今どきのやくざの姿が描かれる。「元やくざ幹部」作家としても知られる原作者の沖田臥竜氏が、現代やくざの“侘しい”日常を語った。

 * * *
 刑務所に長いこと入っていると、外に出た時に普通の生活ができないようになります。私も独房では話し相手がいないから壁にばかり話しかけていたし、異性と接することなんてないので、コンビニで女の店員からタバコ買うだけでも緊張する。独り言の癖もなかなか抜けず、電車の中でつぶやいてジロジロ見られることもありました。社会に戻ったのに、環境の変化についていけない。これが“ムショぼけ”です。

 最初の懲役は21歳の時で、その後、計14年刑務所に入っていました。その当時は「出所したら『やくざとしてのぼり詰めてやる』」と思っていましたが、浅田次郎さんの『鉄道員』を読んで作家になりたいと思って、いつの間にか筆をとっていました。

 29歳の時に一度出所して半年で刑務所に戻りましたが、ちょうどその頃「暴排条例」が話題になっていた。33歳で再びシャバに出てみると、親戚の酒屋に「襲名祝いで樽出してな」とお願いしただけで警察に恐喝で逮捕されそうになった(笑)。もうやくざは無理やなと思い、自分の親分が引退した2014年に足を洗うことにしました。

 今回の『ムショぼけ』は、小説としては3冊目です。監修を務めた映画『ヤクザと家族 TheFamily』で意気投合した藤井道人監督のツテでドラマ化も決まりました。やくざ映画といえば、派手にマシンガンで撃ち合うような作品が多いけど、そんなことまずない。

 やくざの日常は、掃除の仕方が悪いと説教されたり、誰が親分のガソリン代を立て替えるかで揉めたりしている(笑)。カタギになっても、嫁に「あんたがヤクザと知られたら子供が困るじゃない」と解決できない問題を突きつけられる。

 小説もドラマも、そんな元やくざの現実的な侘しさや儚さ、“ムショぼけ”から立ち直っていくさまをリアルに描いています。

【プロフィール】
沖田臥竜(おきた・がりょう)/1976年2月生まれ、兵庫県尼崎市出身。六代目山口組2次団体の元幹部。21歳で刑務所に入り、計14年間の獄中生活を経験。2014年にカタギに。以降、作家に転身。

※週刊ポスト2021年10月15・22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんが完走した「母としてのシーズン」
《真美子さんの献身》「愛車で大谷翔平を送迎」奥様会でもお酒を断り…愛娘の子育てと夫のサポートを完遂した「母としての配慮」
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
《コォーってすごい声を出して頭をかじってくる》住宅地に出没するツキノワグマの恐怖「顔面を集中的に狙う」「1日6人を無差別に襲撃」熊の“おとなしくて怖がり”説はすでに崩壊
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)千葉県の工場でアルバイトをしていた
「肌が綺麗で、年齢より若く見える子」ホテルで交際相手の11歳年下ネパール留学生を殺害した浅香真美容疑者(32)は実家住みで夜勤アルバイト「元公務員の父と温厚な母と立派な家」
NEWSポストセブン
今年の”渋ハロ”はどうなるか──
《禁止だよ!迷惑ハロウィーン》有名ラッパー登場、過激コスプレ…昨年は渋谷で「乱痴気トラブル」も “渋ハロ”で起きていた「規制」と「ゆるみ」
NEWSポストセブン
アメリカ・オハイオ州のクリーブランドで5歳の少女が意識不明の状態で発見された(被害者の母親のFacebook /オハイオ州の街並みはサンプルです)
【全米が震撼】「髪の毛を抜かれ、口や陰部に棒を突っ込まれた」5歳の少女の母親が訴えた9歳と10歳の加害者による残虐な犯行、少年司法に対しオンライン署名が広がる
NEWSポストセブン
新恋人A氏と交際していることがわかった安達祐実
《新恋人発覚の安達祐実》沈黙の元夫・井戸田潤、現妻と「19歳娘」で3ショット…卒業式にも参加する“これからの家族の距離感”
NEWSポストセブン
キム・カーダシアン(45)(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストの元妻の下着ブランド》直毛、縮れ毛など12種類…“ヘア付きTバックショーツ”を発売し即完売 日本円にして6300円
NEWSポストセブン
レフェリー時代の笹崎さん(共同通信社)
《人喰いグマの襲撃》犠牲となった元プロレスレフェリーの無念 襲ったクマの胃袋には「植物性のものはひとつもなく、人間を食べていたことが確認された」  
女性セブン
大谷と真美子夫人の出勤ルーティンとは
《真美子さんとの出勤ルーティン》大谷翔平が「10万円前後のセレブ向けベビーカー」を押して球場入りする理由【愛娘とともにリラックス】
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(秋田県上小阿仁村の住居で発見されたクマのおぞましい足跡「全自動さじなげ委員会」提供/PIXTA)
「飼い犬もズタズタに」「車に爪あとがベタベタと…」空腹グマがまたも殺人、遺体から浮かび上がった“激しい殺意”と数日前の“事故の前兆”《岩手県・クマ被害》
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」でペールブルーを選ばれた皇后雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《洋装スタイルで魅せた》皇后雅子さま、秋の園遊会でペールブルーのセットアップをお召しに 寒色でもくすみカラーで秋らしさを感じさせるコーデ
NEWSポストセブン