ワクチン接種ありきの姿勢へ
いまの韓国には、学校全面登校やワクチン接種の継続的な推進など、2020年に見られたような感染者ゼロを目指すのではなく、政府だけでなく社会の機運としても「ウィズコロナ」に舵を切ろうとしている姿勢が感じられる。現在でも連日、新規感染者は確認されながらも、政府は「今後は警戒レベルの大々的な引き上げや、制限は行わない」という考えも示している。
また、段階的に大型商業施設や飲食店といった場所で「ワクチンパスポート」に値する「ワクチン証明」を導入することも検討されていると言われ、「ワクチン接種ありき」で日常生活を取り戻そうとしている。
40代の男性は、まさにこの「ワクチン接種ありき」を強く感じる出来事を先日体験した。旧盆連休中に義姉家族と合わせて8名で、とあるレストランに入店しようとした。家族であれば連休期間中は最大8名まで集まることが許容されていたが、レストランで、「8名のうちワクチン接種が完了した人が2名含まれれば可能ですが、接種完了者がいない場合は無理です」と断られた。
これはレストランによる独自の対応と思われ、まだ試験的な段階とも言えるが、今後、ワクチン接種率がさらに上昇すれば、こうした対応を導入する店舗が増えるであろうことを感じさせる。男性は「自分は先日、1回目の接種を終え、2回目も受けるつもりでいるので、いずれ、『ワクチン証明』のようなものが導入されても、従うまでだと思います。だけど、”受けない人”や事情により”受けられない人”が肩身の狭い思いをしたり、家族で行動ができなくなる可能性がでてくることを考えると、安易に”ワクチンありき”で進めていくべきではないとも思います」と述べた。
不安を抱く人がいる一方で、10月1日からは海外から韓国への入国者に「ワクチン接種済」を条件にこれまで定められていた2週間の隔離期間の免除となった。さらに、ワクチン接種者を対象にしたグアムやサイパンといった近場の海外旅行商品も出始めており、好評を博しているという。
秋までの「集団免疫の獲得」にこだわってきた韓国であるが、この方向転換がどのような結果をもたらすかは長い目で注視していく必要がある。