コロナワクチン接種を受ける呉世勲・ソウル市長(時事通信フォト)

コロナワクチン接種を受ける呉世勲・ソウル市長(時事通信フォト)

 30代の男性会社員は「若い世代の接種には負担が大きいと感じるので今は受けないと決めている」と言う。また、別の30代女性も「新型コロナに感染するよりもワクチン接種での重い副反応などのリスクが不安だ」と語る。

 こうした背景には、日本以上にワクチン接種と副反応をめぐる問題がオープンにされている影響があるだろう。韓国では国民生活で何か問題を提起したい場合、大統領府のホームページに意見を投稿できる「国民請願」という掲示板が設けられている。社会的な事例や政治に対する意見などを国民が投稿の上、政府に処遇を願い出るというもので、意見提起に20万人の賛同が集まると政府は公式見解の発表などを行うという流れになっている。

 この「国民請願」で最近、特に目につくのがワクチン接種後の副反応に関する内容である。家族が接種後に体調が急変し亡くなったケースや、副反応と思われる重い症状が続いていること、重大な疾患を発症したといった「ワクチン接種」に関連した書き込みが相次いでいるのである。

 いずれも、ワクチン接種との因果関係は認定されていないものの、最近1ヶ月でも兵役中の20代男性がファイザーワクチン接種後に体調不良が続き精密検査を受けたところ「白血病」と診断されたケースや、働き盛りや子育て世代の父親や母親が急死したケースを訴え、ワクチンと副反応による関係性の解明を訴えている。

 この他にも、芸能人が接種後の副反応の症状や体に現れた変化などをSNSで投稿するものも多い。そのため、日本以上にワクチン接種の副反応や関連したと思われる症状が目を引いている印象を受け、マスコミにも取り上げられやすいといったことが、若い世代へ影響を与え、ワクチン接種を敬遠させたり慎重にすべきとさせる事象につながっているのではないだろうか。

 また、これに加えて、1回目の接種を終えているものの接種後の副反応が重かったことなどから、2回目の接種をためらう人や、接種を予約していたものの、当日になって体調が優れないことなどを理由にキャンセルする人も多い。そのため最近では、「残余ワクチン」の増加も問題視されている。

 携帯電話の番号を近隣の医院などに登録しておくと、当日の予約キャンセルなどで接種枠ができた時に連絡が来る「残余ワクチンシステム」の運用をみると、以前と比較して最近では、1病院で1回につき15人分の残余ワクチン(キャンセル)が発生している。ワクチン接種を回避する傾向が増えているのが見て取れるのだ。コロナワクチンは、たとえばファイザーであれば1瓶が5~6回ぶんで、開封したら6時間以内に使用しないとならない。もし3回ぶんしか使用しなかった場合、残りの2回ぶんが使われずに6時間経過したら、廃棄するしかなくなる。もちろん政府としては、ワクチンのロスは最大限食い止めたいところであり、接種を見送っている人やこれまでの機会を逃している人への接種を引き続き推進していきたい考えである。

 日本と比較すると、前述のように副反応などのワクチン接種の問題点についての情報公開がオープンではあるが、「ワクチン接種派」と「反ワクチン派」の意見対立などは少なく見える。韓国の人々は、粛々とワクチン接種を受け入れながらも、不安や悩みを抱えている人も多いというのが伺える。

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