コンテンツメーカーとして世界進出
日曜劇場が信じられるリーダーを描き続けている理由は、コロナ禍の影響だけでないでしょう。その背景には、民放連ドラのトップ視聴率を記録し続けている“日曜劇場”というブランドへの自負と、世界へ向けた展開が感じられるのです。
現在の視聴者は、緻密なストーリーより明快なエンタメを好む傾向が強く、さらにそれは世界の市場でも、おおむね同様。だからここ数年の日曜劇場は、難易度の高いロケに挑み、キャスティングにこだわり、映像の美しさを追求することで、エンタメ性を高める努力を続けてきました。ネット上を見ても、「このドラマ枠はスケールが違う」という声が目立つようになり、局や制作サイドも、それを意識して制作している様子が伝わってきます。
そんなブランディングへの意識が表れているのが海外展開。『日本沈没』はNetflixで、毎週放送日の24時から190超の国や地域に一斉配信することを発表しました。また、『TOKYO MER』は27日からディズニープラスで配信スタート。ディズニーが日本のドラマを世界配信するのは初めてである上に、継続的に取り込んでいくことも明かされています。
さらに来年1月期の『DCU』は、2つの世界的コンテンツ制作会社と共同制作し、海外展開を示唆。「TBSが制作したドラマを海外の会社が買って放送する」のではなく、「最初から国際的な視野で共同制作を行う」という画期的なプロジェクトであり、こちらも継続的に行われていくようです。
TBSの日曜劇場は“連ドラ日本代表”のような立ち位置で、世界的なヒットとコンテンツメーカーとしての名声を得ようとしているのでしょう。それはCM収入減に悩まされる現状への打開策でもあり、「制作力で稼ぐ」という新たなビジネススキームになりうる重要なものです。
もちろん民放他局も黙って見ているだけではなく対策を練っているでしょうが、日曜劇場が数歩先を行っていることは間違いありません。まずは「今秋、信頼できるリーダーを描いた作品が国内だけでなく世界で受け入れられるのか」が注目を集めるでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。