医師主体では無理
早川:もちろん名医を見つけられても断薬できるわけではありません。
大和田:大事なのは意識改革です。薬で数字合わせをしても合併症が治ったわけではありません。
早川:むしろ薬を服用している期間は「治療する猶予をもらっている」と考えるとよいでしょう。生活習慣の改善など、できる限りのことをするという覚悟が必要です。
大和田:減薬、断薬は“主役”が変わるんです。普段、薬を処方されている時は「医者に治してもらっている」と受け身になりがちです。一方、断薬は患者さんが自発的に食事療法や運動をするので、主人公は患者さん。
早川:その第一歩が難しい。薬を減らすことの抵抗も強いので。私は「とりあえず1か月だけでも信じてください」と何度も言い続けて、「わかった、わかった。とりあえず1か月だけな」と、相手の根負けまで持ち込みます。
大和田:成功体験を得られれば、翌月からは前向きにやってくれます。患者さんの“よき伴走者”となって一緒に道を走る作業はいいものです。
早川:一方で患者さんが断薬に成功して巣立っていくと寂しくも感じます。
大和田:でも患者さんの中で健康になる方法論が生き続けることはなによりもうれしいものです。
【プロフィール】
大和田潔(おおわだ・きよし)/1965年生まれ。東京医科歯科大学大学院医学部医学科卒。頭痛専門医。総合内科専門医。東京医科歯科大学臨床教授を経て、2007年に秋葉原駅クリニックを開院。著書に『知らずに飲んでいた薬の中身』など。
早川麻理子(はやかわ・まりこ)/1966年生まれ。管理栄養士。名古屋経済大学人間生活科学部管理栄養学科准教授。日本臨床栄養協会理事。肥満症をはじめ生活習慣病などの栄養指導に従事。著書に『美味しいダイエット革命』など。
※週刊ポスト2021年10月15・22日号