2018年8月、カナダ・トロントで母親と鍼灸クリニックに向かう羽生
「羽生選手にはシーズンオフという意識はなく、ずっと“震災復興シーズン”が続いているという気持ちなのではないでしょうか。新シーズンのスタートは7月ですから、『ドリーム・オン・アイス2021』で新しいSP(ショートプログラム)を披露することもできた。今年は9月に入ってカナダの入国制限が緩和されたので、カナダにも渡航しようと思えばできるはずです。実際に紀平梨花選手(19才)は、羽生選手のコーチでもあるブライアン・オーサー氏(59才)のもとで練習を始めているのですから。
NHK杯の出場選手のバイオグラフィー(略歴)にも、これまでは練習拠点としてカナダのトロントのみが記載されていましたが、仙台が追加されています。彼の思いが故郷に根ざしていることの表れかもしれません」(別のフィギュアスケート関係者)
羽生自身、3度目となる五輪イヤーは、これまでにない環境でスタートしている。それはスケートリンクの外でも顕著だ。羽生の著書が、この10月立て続けに出版される。1冊目は10月26日発売の『羽生結弦 未来をつくる』(羽生結弦、折山淑美著・集英社)。シニアデビュー後の羽生の軌跡が凝縮されたノンフィクション作品となっている。2冊目は10月30日発売の『共に、前へ 羽生結弦 東日本大震災10年の記憶』(日本テレビ「news every.」取材班著・祥伝社)。タイトル通り、羽生の震災の記憶を記録として残し、東日本大震災を後世にまで語り継ぐことを目的にした本だ。
「この1年、羽生選手はこれまでにないほど自分の思考を整理し、言語化しています。書籍の出版に精力的に挑んでいるのもそうですが、落ち込んだり、傷ついたりしたことをあえて言葉にしているのは、それを乗り越える術を身につけてきたことの証。それは過去の自分を振り返り、原点に戻ることで可能になったのでしょう。
もちろん誰にも真似できないことですが、メンタルが大きく影響するフィギュアスケートにおいては、最高のメンタルトレーニングと言えるかもしれません」(フィギュアスケートライター)
10月4日にはジェネリック医薬品専門の製薬会社である東和薬品のCMのオンエアが始まり、そのなかで羽生は、共演する黒柳徹子(88才)にこう問いかけている。
「僕はけっこうケガが多くて、ケガによって心が傷ついたりとか、ちょっとトゲのある言葉に傷ついたりとか、そういうこともあるんですけど、業界で長く活躍されている徹子さんは、どうやって乗り越えているのかをお聞きしたいです」