佐藤さんの印象を語った辛酸なめ子さん
そんな溝井さんは、佐藤さんとほぼ同時代を生きてきた女性として、本を読んでこう感じたという。
「大正から昭和初期に生まれた女性の多くが、結婚難でした。世は戦争真っ只中。『千代女外伝』にもあるように、女子は軍事産業に送り込まれない方策として結婚を急ぎ、乗り遅れた人は結婚ができなかったんです。運よく結婚できても夫を戦争で失う女性、合わない人と結婚した挙げ句、辛抱して添い遂げなければならなかった女性も少なくありませんでした。
そんな中、佐藤さんは2度も結婚されてすごく経験豊富(笑い)。当時は離婚して実家に出戻ったら後ろ指をさされ、妹の縁談にも差し障りがあったくらいですから。容姿もさることながら家庭環境もよかったのでしょう。随分ご苦労されてきましたが、佐藤さんの生き方はわれわれの世代の中では実に自由で羨ましい」
かくいう溝井さんも、数年前に夫が他界し、いまは自由を謳歌するおひとりさま。佐藤さんはヘトヘトの果に昏倒し、心臓検査を受けることになったものの当日の朝に桃を半分だけ食べてしまったがために延期になったことや、病院で物扱いされたことを憤怒の念とともに面白おかしく綴った。溝井さんはひとり暮らしは大変ではない?
「おかげさまで認知症には縁遠いけれど、80歳を過ぎたら腰やら背中やらが痛んできましたね。でも3食の調理と庭の手入れ、掃除洗濯は要領よくやっていますよ。脳も体も使わなくなったら一気に老いが進みそうで(笑い)。だからきっと佐藤さんも『ヘトヘト』とはいいながらも、達者でいらっしゃるのでしょう」
※女性セブン2021年11月4日号
“コンピューターおばあちゃん”こと溝井喜久子さん