千葉市内に石破氏が現われると周りには人だかりができていた(相澤氏撮影)

千葉市内に石破氏が現われると周りには人だかりができていた(相澤氏撮影)

「我々自民党は、もっと謙虚に、もっと誠実に。人間ですから間違うことはあるでしょう。間違えることがあったらきちんと責任を取る! 自由民主党はより誠実で、より謙虚で、より責任を問う、そうありたいと思っています」

 冒頭から核心に迫っている。はっきり口に出していないけれど、これは「森友事件」のことを指している。森友学園に対する国有地の巨額値引き売却と、取引に関する公文書の改ざん。明らかに間違いだ。間違うことがあったら、責任者がきちんと責任を取るべきだ。裏を返すと、森友事件では誰もきちんと責任を取っていない。そう語っているように聞こえる。

「私たちは、野党の悪口を言うのはもうやめたいと思います。野党の悪口言ったって自民党が良くなるわけでも何でもない。野党がダメなことはみんなわかってる。じゃあ自民党は一体どうなんだ? とおっしゃる方はいっぱいいます。何でこうなったんだろうか? その説明責任は果たすべきでしょう」

 話がさらに踏み込んでいる。野党がダメだと自民党は言うが、その自民党は森友事件をはじめ数々の疑惑に答えないままだ。どの口が言うか! と思っている人は多い。事件はなぜこうなったのか? きちんと再調査した上で説明責任を果たすべきだと聞こえる。

「法的責任がなくても、我々は政党である以上、国民の皆さま方に政治的責任も道義的責任も果たしていかねばならないでしょう。自由民主党の中から変えていかねばなりません」

 そう訴え、最後は応援している候補を持ち上げて結びとした。実にうまい話し運びだ。候補について「保身のために言うことを変えたりはしません」と語ったのが、岸田への皮肉に聞こえるのは僕だけだろうか? 現場で交通整理にあたっていた自民党員がつぶやいた。

「やっぱり石破さんは演説が上手だなあ。人の集まりが全然違う」

 最後にこのエピソードをご紹介したい。石破が街頭演説会場に向かって路上を歩いている時、集まってくる人々の中にいた一人の女性が石破を見つめながら話しかけた。

「石破さん、私ずっとあなたを応援していたんですよ。こんなことで終わってしまって、本当に残念です」

 ここで言う「こんなこと」は9月の自民党総裁選のことを指すのだろう。だが僕は思わず横から口をはさんだ。

「石破さんは、まだ終わってはいませんよ」

 一呼吸おいて石破自身も表情を引き締めて答えた。

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