総裁選では小泉氏とともに河野氏を推し「小石河連合」と呼ばれた

総裁選では小泉氏とともに河野氏を推し「小石河連合」と呼ばれた

「よし、石破さんの演説をのぞきに行こう」

 この時点ではまだ野次馬のつもりだった。

 千葉市内の個人演説会場。室内には自民党支持者がびっしり詰めかけていた。選挙の応援演説だから、普通はまず野党を叩き、自民の候補を持ち上げる。石破の演説もその基本に沿っている。野党はなぜダメなのかを列挙し、自民の候補の取柄を強調する。だが、その先が少し違った。

「野党の皆さんにはもうちょっと頑張ってもらわないと困るんです。野党が頑張らないと自民党が良くならないんですよ。自民党は変わらなければいけないんです」

 よきライバルがいることで切磋琢磨し自分たちも成長していく。スポーツや勉学の世界でよく言われることだが、政治でも同じだろう。演説会が終わり、支持者たちとの記念撮影が一段落したところで、僕は石破に近づいた。

「おや、来てくれてたの?」

 以前から面識がある僕に声をかけてきた。

「そうなんですよ。たまたまきょう、千葉市内で講演の仕事があったので寄ってみました。会場の反応がよかったですね」

「皆さん、このままではいけないって感じていらっしゃるんですよ」

 ここで僕は森友再調査の話題を出した。ヤフーニュースの「みんなの意見」というアンケート調査で、衆院選の最大のテーマは何か募集したところ、「森友問題の再調査」が3割を超えダントツとなっている。50万人近くが投票する中で、外交・安全保障や経済・成長戦略、コロナ対策をおさえての堂々の1位だ。すると石破は頷きながら答えた。

「やはり皆さん、そう思われているんですね。こんなこと許しちゃいけないというのは与野党関係ないんです。不思議なのは野党ですよ。この問題に絞って追及しないんですよね」

 選挙では多くの項目を列挙して訴えても普通の有権者にはなかなか届かない。森友再調査のようなわかりやすいテーマに絞って攻めてこそ、自民党もより良くなるのに、という指摘だった。

街頭演説の「人の集まり」が違う

 午後3時、場所をJRの駅前ロータリーに移して、いよいよ街頭演説だ。個人演説会とは違い、自民党支持者以外にも多くの方に語り掛けることになる。ここでどう語るかで演説の真価が問われる。大勢の人が集まる中、石破は選挙カーにのぼりマイクを握った。そこで石破はこう語った。

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