ライフ

【新刊】ジェンダーの檻をコミカルに読ませる『選んだ孤独はよい孤独』など4冊

『選んだ孤独はよい孤独』

『選んだ孤独はよい孤独』

 読書の秋、おうち時間が充実するおすすめの新刊4冊を紹介しよう。

『東京ゴースト・シティ』

東京ゴースト

『東京ゴースト・シティ』

バリー・ユアグロー著/柴田元幸訳/新潮社/2420円
フードライターの伴侶と来日したユアグロー。旅を愛する作家のユーモア溢れる奇譚集になるはずだったがコロナで事態は一変。マスクをつけ、こそこそコンビニに出入りし、市川崑の前回のオリンピック記録映画を居室で見るはめに。そこに登場する太宰や菅原文太や三島由紀夫らの幽霊。著者がこんなディープな日本通だったとは!? 猥雑でモダンな東京の魅力を再発見する。

『ブルースRed』

『ブルースRed』

『ブルースRed』

桜木紫乃/文藝春秋/1650円
8人の女達が影山博人を語る『ブルース』の続編。写真家の道を絶ち、義父博人の復讐を果たし、釧路の政財界を牛耳る黒幕となった影山莉菜。博人のDNAを持つ武博が国の赤絨毯を踏むまでの“雑草刈りと整地”という20年計画を粛々と実行する。博人はかつてこう言った。“男と違って女のワルにはできないことがないからな”。女の情念が交錯するノワールに終始ゾクゾク。

『傘のさし方がわからない』

『傘のさし方がわからない』

『傘のさし方がわからない』

岸田奈美/小学館/1430円
本に写真が差し込まれている。子供を抱きボルボの横に立つ若い夫婦。免許証を持たない著者は前著の印税など全財産をはたいてこのボルボを購入した。在りし日の父を偲び、車椅子用に改造して母の足となるように。大学生でベンチャーに就職し、精根尽き果て、好きな人(母とダウン症の弟)と好きなこと(文章を書くこと)をして暮らしていくと決めた著者。新世代の人生論でも。

『選んだ孤独はよい孤独』

山内マリコ/河出文庫/748円
地元の仲間達といまだにつるんでいる30代のホモソーシャル男、男を支配したがる花音との恋愛体験でミソジニー(女嫌い)になってしまった男子高校生、広告代理店に勤務する“デキる男”の化けの皮、先輩の「逃げろ!」で職場をトンズラした男の後日譚。短編あり、掌編あり、3行小説あり。スタッカートの効いた配置と、異議申し立ての爪を隠した柔らかな語り口を楽しんで。

文/温水ゆかり

※女性セブン2021年11月4日号

関連記事

トピックス

2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
中途採用応募者が急に増えて担当者は困惑(写真提供/イメージマート)
《SNSの偽情報で実害》中途採用に「条件満たさない」応募者が激増した企業、勝手にFラン認定された大学は「少子化の中、学生に来てもらう努力を踏み躙られた」
NEWSポストセブン
趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
日本復帰2戦目で初勝利を挙げたDeNAの藤浪晋太郎(時事通信フォト)
横浜DeNA・藤浪晋太郎を大事な局面で起用する三浦大輔監督のしたたかな戦略 相手ファンからブーイングを受ける“ヒール”がCSの行方を左右する
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
15人の大家族「うるしやま家」(公式HPより)
《ビッグダディと何が違う?》フジが深夜23時に“大家族モノ”を異例の6週連続放送 今、15人大家族「うるしやま家」が人気の背景 
NEWSポストセブン
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン