シニア世代の人材紹介サービスで知られる株式会社シニアジョブの中島康恵代表が説明する。
「転職や独立にあたって資格を持っていることが有利なのは間違いありません。弊社の案件でもシニア世代で転職・独立に成功する方の7~8割は何かしらの資格を持っています。ただ資格を取りさえすればなんとかなるという思い込みは禁物です。60歳になって資格を取って、さぁ転職・独立に有利だろうと思っても現実はそうではない。
年齢に関係なく、資格を取ってからその分野で下積みをするくらいの心構えがないとだめだと思います」前出の須田氏は「資格も大切だけど、経験はもっと重要だ」と言う。
「現在私は社会保険労務士として活動しているのですが、同じ社労士仲間で会社員時代に組合活動をしていたという人がいます。労働条件の話し合いなどに活かせるようにシニアになってから社労士の資格を取得したのだそうです。資格と経験の両方を兼ね揃えている人材ですね。こういう人は独立してからも成功しやすい」
“経験”について須田氏が続ける。
「実は私、以前勤めていた会社を不当に解雇された経験があります。この時は同じような目に遭った仲間で作る組合に加入し、2年近くの団体交渉を経てようやく解決にこぎつけました。
当時は心がすり減るような思いだったのですが、社労士として活動するようになってから、この頃の経験が大きく役立っています。労働条件の相談に乗る時に相手の気持ちがよく分かるんですよね。こうした負の経験も資格と組み合わせることで大きな武器になるのです」
資格は持っているだけでは意味がない。武器にするためには相応の努力・経験が必要なのだ。
※週刊ポスト2021年11月12日号