トークショーなど、独自のイベントを次々、開いているのも、「Readin’ Writin’」の特色になっている。
「昔から落ち着きがないというか、ぼくは動いていないとだめなんです。イベントは、初めは知り合いの編集者に声をかけていただいて、やり方を覚えてからは、自分で企画して声をかけたり、かけてもらったり、ですね。この本屋をやるうえで、なくてはならないものになっています」
イベントを通して、品揃えも変わった。開店時は絵本中心だったが、4年経ったいまは、フェミニズム・ジェンダー、日本語・言葉、食文化、差別、外国文学、建築関連の書籍が目立っている。
中二階に畳スペースがあり、短歌教室や一箱古本市が定期的に開かれるほか、月3000円で貸し出すレンタル棚のコーナーもある。
「本屋の理想型が自分にあるわけではなく、毎日、何かあって、一つひとつ対応して変わっていく感じです。店の本も、最初の300冊から増えるにしたがって、棚を増設したり、棚の中に自分で日曜大工的に小さい棚を作って置いたり、その都度、置き場を増やしていっています」
店をやっていると思いがけないことも起きる。開店前に受講した起業塾のコースで、来店してほしい女性客のイメージを具体的に思い浮かべろと講師に言われ、行き着いたのが小泉今日子さんだった。その小泉さんが、番組の収録で先日、来店した。
「本屋をやることに納得したわけではない」と言っていた妻も、たまたま仕事が休みで収録を見学、終了後に小泉さんとの2ショット写真を撮ってもらったそう。写真が自宅に大切に飾られていると聞いて、「よかった」と思った。
「緊急事態宣言が出たときも店を閉めることはなく、売り上げもそれまでよりいいぐらいでした。いまはいい風が吹いてますけど、いずれ止むときが来ます。いま見ているのとは違う景色がこの先にあるはずで、その景色も見てみたい。目標は『低く長く遠く』で、できるだけ長く継続したいですね」
【プロフィール】
落合博(おちあい・ひろし)/1958年山梨県生まれ。 Readin’ Writin’ BOOK STORE店主兼従業員。東京外国語大学イタリア語学科卒業後、読売新聞大阪本社に入社。ランナーズ(現アールビーズ)を経て、1990年毎日新聞社入社。主にスポーツを取材。論説委員(スポーツ・体育担当)を最後に2017年3月退社。著書に『こんなことを書いてきた スポーツメディアの現場から』『闘う男たち 神戸製鋼ラグビー部』など。ウルトラマラソン「柴又100K」完走3回。
取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2021年12月2日号