かつての出口調査は有権者に質問票を渡す形だったが、現在はタブレットを示して該当部分をタップしてもらう(イメージ、時事通信フォト)

かつての出口調査は有権者に質問票を渡す形だったが、現在はタブレットを示して該当部分をタップしてもらう(イメージ、時事通信フォト)

「世論調査をやっている、と声をかけただけで睨まれたり、おたくの新聞は信用しないなどと言われることもありました。中にはあからさまなウソを答える人もいて、なぜここまで嫌われるのかと。ネットなどを見て、政治的な思想の違いから対立する人たちがいることは当然知っていましたが、現実でも本当にそうなのだと思いました」(徳田さん)

 徳田さんが、どちらかというと革新系といわれる新聞社の調査に参加していたから、保守的な市民から攻撃された、という一面もあるのかもしれない。一方、徳田さんと同じ投票所で調査を行っていた保守系全国紙の調査員もまた、革新系野党の候補者を支援していると思しき市民から「口撃」されたり、無視されたのだと肩を落とす。

「私たちに言ってもどうしようもないのに、みなさん、ただ政治的な不満をぶつけてこられる。調査員が若い女性だったらいくらか回答数も増えるようですが、我々みたいなおじさんはそもそも嫌われているっていうのもあるんでしょうか、回答してくれる人が極端に減ってしまう」(徳田さん)

 テレビや新聞の事前の出口調査結果と、実際の投票結果に乖離があったことも報じられ、市民、ネットユーザーの大マスコミ不信は止まる気配を見せない。現役の大手紙記者が警鐘を鳴らす。

「最近は出口調査に協力していただけない方が多くなったとは聞いています。もちろん、みなさんが調査に協力する義務はありませんが、調査によって投票や開票で不正が行われていないかのチェックにもつながっている側面もあるのです。出口調査なんてなくていい、と仰る方も増えています」(大手紙記者)

 例えば、投票締め切り時刻と同時にマスコミが報じる「当選確実」などといった、いわゆる「ゼロ打ち」報道に対する疑問を抱き、これらに対しても「マスコミの印象操作だ」と見る人は、意外と少なくない。さらに、その疑問について、調査やデータを確認した上での主張ではなく、感情的にSNSなどで意見表明を行う人が増えた印象だ。そして、ネットで主張するだけでは飽き足らず、そうした不満をリアルでも吐き出すようになってきた。その矛先は、大メディアの問い合わせ窓口ではなく、徳田さんのような末端の人々だ。

 筆者は以前、テレビ局や新聞社の視聴者、読者向けの電話窓口に関する取材をした際にも、徳田さんと同じように第三者から一方的に攻撃され、やるせない気持ちを抱く人々に遭遇した。また、新型コロナワクチン接種のコールセンターで働く人たちも同様だった。意見のある人に対峙し、大きな組織などへの不満や憎悪をぶつけられる矢面に立たされる。いつも、スケープゴートになっているのは、そうした現場で働く非正規スタッフである。徳田さんはいう。

「調査員の仕事でもそうですが、中間層の不満の捌け口となる少し下の階層が出来上がりつつあるんじゃないかなと。私はそこにハマった形ですよね。できれば以前のような生活に戻りたいですが、這い上がるのは難しそうです」(徳田さん)

 とにかく理不尽なことにも耐え、頭を下げ、他人の鬱憤を晴らすための仕事をせざるを得ない。そんな階層が新たに生まれていることについて、世の中は気がついているのか。そんなガス抜きで不満をそらされ、本当に抗議するべき相手が逃げ切ろうとしているのを見逃してよいのか。気がつかないふりをして、自身は「まだマシな方」と考えるだけの人が多い印象も日に日に強まっている気がするのだが、あまりに不健全で、見誤っているという他ない。

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