では、なぜ普通のネタ番組は見てもらえなくなったのか。
最も影響が大きいと言われているのが、ネタを見る環境の変化。特に民放各局が狙うコア層は、ネタを芸人のYouTubeチャンネルなどで見るようになりました。さらに、テレビのネタ特番が企画しがちなショートネタや歌ネタのコーナーも、むしろTikTokなどで見ているのです。
彼らはテレビのネタ番組に対して、「『もう一度見たい』と思ったネタをリピートできない。つまらないネタを飛ばせないから不便」などの不満を抱えているため、よほどテレビでしか見られないオリジナリティがない限り、積極的に見ようと思わなくなっているのでしょう。
「普通のネタ番組」が通用する条件とは
民放各局の作り手たちも、そんな視聴者の変化を感じ取っていないわけではありません。
2020年4月、『有吉の壁』がゴールデンタイムでレギュラー化されたとき、他局のテレビマンたちは驚きとともに、「うまくいかないのではないか」と不安視していました。しかし、『有吉の壁』は普通のネタ番組ではなく、さまざまなロケ地を生かしたネタや、「ブレイク芸人選手権」「ブレイクアーティスト選手権」などのオリジナリティあるコーナーでコア層の支持を獲得したのです。
ちょうどそのころ視聴率調査がリニューアルされ、民放各局がコア層に向けた番組制作に舵を切りはじめました。その中心はお笑い要素の濃いバラエティであり、『千鳥のクセがスゴいネタGP』、『新しいカギ』(フジテレビ系)などのネタ番組も誕生。この2番組は、「クセがスゴいネタ」「新しいユニットの新作コント」という明確なコンセプトが打ち出され、「普通のネタ番組」という印象はありません。
また、ネタ特番も、歌ネタに絞った『爆笑!ターンテーブル』(TBS系)、オリジナル企画を組み合わせた『お笑いオムニバスGP』(フジテレビ系)、ネタだけでなく歌とコラボした『FNSラフ&ミュージック~歌と笑いの祭典~』(フジテレビ系)など、「普通のネタ番組」ではなく、「ここでしか見られないネタ番組を作ろう」という狙いが見えます。