2002年、渋谷区のゲームセンターで学校帰りクレーンゲームに興じる女子高生(時事通信フォト)
移動制限とか下降制限、配置などクレーンの操作はしています
実際、ゲームコーナー(業界の呼称はシングルロケ)など風営法にあたらない店舗の一角にあるようなクレーンゲームにはゲーム機本体や携帯音楽プレーヤーを景品にしている筐体もあるが、これは明らかな高額景品、グレーどころか法的にアウトである。
「でも捕まったりはしませんからね、(警察も)その程度なら注意するくらいでしょう。見せしめでやられたら運がなかった、でしょうね」
こうしたショッピングモールやビデオショップなどにあるゲームコーナーの一部は風営法が適用されない規模(営業面積の10%以下)やレイアウト(明確な入り口や区画を作らず一般営業フロアの一部とする)で対処している。また2017年、「絶対取れないクレーンゲーム」で大阪のゲームセンターが摘発されたが、このように絶対取れない設定にも関わらず「取れると称して遊戯に誘引」した場合は詐欺罪(2018年、実際に詐欺罪で有罪判決)となるが、立件するには単に「取れない」というだけでは難しい。
「なかなか証明できませんからね、まあ民事で野放しです。警察も暇じゃない。景品にもよりますが、まともなゲーセンなら1個取るのに3000円くらい使ってもらえれば御の字、そんなところじゃないですか」
ペイアウト率(景品の払い出し)は30%もあれば上出来ということで、あくまで店や景品原価にもよるが3000円というのはそれほどボッタクリではない、ごく普通だという。
「筐体にもよりますがプレイ回数、インカム(入金数)、プライズの(排出された)数を見て払い出しの調整をします。実際はもっと複雑ですが、簡単に言えばこんな感じです」
だとすれば店側が操作すれば、それは100円、200円で取れるゲームにもなるし、1万円使っても取れないゲームにもなるのでは。
「もちろん操作はしてます。アームをゆるくしたり、移動制限とか下降制限、配置を工夫したりね。大手は決まりがありますが、独立系や風営法外でやってる店はこれまた好き勝手でしょう。絶対取れないのはダメだけど、難易度そのものに法規制はありませんから」
移動制限とはアームの可動域を狭めること、下降制限はクレーンの降りる位置を調整すること、配置とはプライズを置く場所で、いかにも取れそうな(落ちそうな)場所に置いたりする。客も必死なら店も必死、常に100円、200円で取られては経営が成り立たない。
「結局は店のさじ加減ですね。日々試行錯誤です」
その店側のさじ加減、試行錯誤に問題はないのか。それこそ確率機、ある一定額以上のお金を費やせばアームのパワーが強くなって景品をとれる確率が高まる、「必ず」まとまった金額を使わせて景品をとらせる、とされる確率機はユーザー間で当たり前のように語られるが、公式にはその存在を明確には認めていない。確率を設定できる筐体はあるが確率機ではない、あくまでクレーンを操作する遊び、というスタンスである。当たり前の話で、技量を無視した結果の制御は5号営業のゲーセンでは風営法違反となるからだ。大問題では?
「大問題でしょうね。筐体にもよりますが、それをいいことに好き勝手やってる店は本当に酷い。だから確率機なんて噂される。実際、確率機呼ばわりされてもしょうがない」
これについてJAIAからは「機械の調整について協会は決められない、各社にゆだねている」と回答いただいた。前述の2017年の「取れない詐欺」のような件は「個別の事例で協会へ報告があった場合は、所管の警察と相談して対応している」とのことだが、やはり難易度や確率に関しては各社、各店舗の自主判断でしかないようだ。日本ではないが、今年アメリカでセガの現地法人が「一定金額を入れないと取れない設定にして、いつでも腕次第で取れると称する確率機は詐欺」と訴えられている。2019年にはアリゾナ州も訴えた(のち和解)。ちなみにタイではクレーンゲームそのものが賭博とされ、すべて許可制である。