それに対し、麻生氏はさっそく動いた。12月7日、自らが主導して党総裁直属の「財政健全化推進本部」を立ち上げ最高顧問に収まった。さらに会長には、茂木氏が旧竹下派「平成研究会」の会長に着任する前の会長だった額賀福志郎・元財務相を招いた。政調より格上の総裁直属組織を被せ、高市氏動きを封じたわけだ。
今臨時国会で高市氏は、岸田首相の意向に反し、中国政府の人権抑圧に抗議する国会決議案の提出に強い意欲を示していた。しかし結果は断念にすることになり、高市氏は17日の記者会見で「茂木氏の署名がないと国会に出せない。大変悔しい」と、怒りの矛先を茂木幹事長に向けた。さらに年明け2月開催には北京五輪が控えており、安倍・高市両氏を中心とする党内の対中強硬派は「外交的ボイコット」はもとより、批判決議案の提出を岸田首相と茂木氏に迫ると見られ、なお火種はくすぶっている。
もっとも、岸田、麻生両派に茂木派を加えた主流3派は150人に迫る。高市氏が頼みとする「清和会」(安倍派)の人数は95人だが、派内に岸田支持派を抱えており、けっして一枚岩ではない。岸田首相、茂木氏、そしてその後ろ盾となっている麻生氏への権力集中は、政治力学的にもはっきり見て取れよう。
たとえ傀儡政権と呼ばれようとも、麻生氏が握る手綱を離さなければ、少なくとも来夏の参院選まで岸田政権は安泰である。
◆ジャーナリスト・藤本順一の政治コラム「永田町ワイドショー」