2015年に発表されたアメリカの臨床試験では、約9400人の高血圧患者を追跡調査したところ、上の血圧を140未満まで下げた群よりも、120未満に下げた群の方が心筋梗塞や脳卒中のリスクが低く、死亡率も低いという結果が示されています」(室井さん・以下同)
ならば、躊躇していた降圧剤は積極的にのんだ方がいいということだろうか。室井さんは、「下げる方法を誤ると、逆に体に負担をかける」と警鐘を鳴らす。
「“血圧を下げる”と言っても、薬で無理に下げるのと、運動や食事療法を取り入れて下げるのでは、まったく別物です。乱れた生活習慣を続けながら薬をのんで血圧を下げている状態は、虫歯治療のために歯医者へ通っているのに甘いものを食べて歯磨きをしないのと同じ。血圧の“値”ばかりに頭がいって、生活習慣の改善がおろそかだと病気につながる恐れもあります」
それでも、新型コロナの重症化リスクになると言われると、なかなか血圧が下がらない人は薬に頼りたくなってしまうかもしれない。
「新型コロナの最大の重症化リスク因子は“年齢”です。重症化するのは感染者全体の約1.6%で、50代は0.3%ですが、60代以上では8.5%と急増する。この理由は、高齢になるほど高血圧だけではなく、糖尿病などさまざまな疾患を持つ人が増えて、感染症の悪化に耐えられなくなるからだと考えられます。血圧が高いことだけが問題ではないので、コロナ禍だからと血圧に一喜一憂するのではなく、生活改善を心がけるのが大切です。
実際に、野菜をよく食べる人や運動をしている人は新型コロナに感染しても重症化しにくいという報告があります。今後は、血圧の数値に執着するのではなく、“どうやって下げるか”ということへの関心を高めることが重要になってくるでしょう」
血圧は、現在の基準値よりさらに低い方がいい。ただし、生活習慣の改善を中心に、下げ方を医師と話し合うべきだ。
※女性セブン2022年1月6・13日号