1970年3月、東京大学入学試験。検問所で受験票を見せ、机で固めた狭い通路を通って試験場に向かう受験生たち(時事通信フォト)

1970年3月、東京大学入学試験。検問所で受験票を見せ、机で固めた狭い通路を通って試験場に向かう受験生たち(時事通信フォト)

秀才かつ受験に特化した訓練と対策をした人しか東大理IIIは入れません

 素朴な疑問だが野球やサッカーのエリートはプロを目指す、理IIIということは医者を目指すのだろう。ごく一部には医師免許を持たずに研究者を目指す場合もあるが、ほとんどは医者になる。理III入試という日本で一番難しい試験に合格することと医者になることは命題が違うような気がするのだが、どうか。

「いえ、トップクラスの子たちにとっては医者より理IIIなんです。親や学校からずっと思い込まされてきた子たちです。洗脳と言っても構いません」

 洗脳とは穏やかでないが、親にそのつもりがなくとも、そうした学校や環境で自然とそう思い込んでしまう子もいるのかもしれない。だが、程度の差はあれそれくらいの「受験マシーン」にならなければ日本のトップ校、まして日本の受験上位100人とされる理IIIには入れないのだろうか。

「違います。それでも入れないんです。いや、受けるレベルに達しない。よく『勉強しない秀才が入った』なんて話がありますが実際はどうか」

 極稀にニュースでスポーツなど他のことも成し遂げながら理IIIに入れてしまう子などが話題になるが、レアケースだからこその全国ニュース。受験業界からすれば、何十年も関わってきた関係者からすれば一般的な現実は違う、ということだろう。本旨ではないのでエクスキューズに留めるが、世の中には何もかも自然に記憶できてしまう特殊な人もいる。

「東大というだけならそういう子もいますが、理IIIとなると別です。(経験上は)秀才かつ受験に特化した訓練と対策をした人しか入れません。その上で受験の向き不向きがある、ともいえます。極端な向き不向きで理III受験に向いているような子、それを『才能』と言う人はいるかもしれませんが」

 日本中の子供は中学であれ、高校であれほぼ全員が受験を経験しているだろう、理IIIに入るのがその世代の受験上位100人余(多世代から入る浪人もいるだろうが)と考えれば恐ろしいほどの狭き門。ましてやその毎年合格者の3割から5割近くを占めるとされる筑駒、灘、開成、桜蔭の子たちは受験における「究極」だろうか。それにしても受験に「向き不向き」とは面白い話。

「おっしゃる通りその4校が日本では別格です。他のトップ校なら(理III は)数人出れば万々歳です。それすら凄い。田舎の公立進学校で1人出たら学校側も大喜びですよ。宣伝になります」

 受験の価値観はさまざまだが、こと理IIIとなると問答無用にトップ中のトップ、正直、普通に生きていると別世界のように感じる。実際、別世界なのだろう。しかし先の言葉を借りるなら「洗脳」が溶けないままに、その合格者100人余に入れなかった、その前の段階で否定された子はどうなるのか。

「これに限りませんが、普通は子供なりに軌道修正するじゃないですか。中学受験でふるい落とされて、高校受験でふるい落とされて、校内や予備校でふるい落とされて、どこかで『それなり』に落ち着きます。でもふるい落とされても洗脳が解けない、洗脳され続けてしまう、勝手に思い込んでしまう場合があります。その子次第、と言われればそれまでですが」

関連キーワード

関連記事

トピックス

お笑いコンビ「ガッポリ建設」の室田稔さん
《ガッポリ建設クズ芸人・小堀敏夫の相方、室田稔がケーブルテレビ局から独立》4月末から「ワハハ本舗」内で自身の会社を起業、前職では20年赤字だった会社を初の黒字に
NEWSポストセブン
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン
「オネエキャラ」ならぬ「ユニセックスキャラ」という新境地を切り開いたGENKING.(40)
《「やーよ!」のブレイクから10年》「性転換手術すると出演枠を全部失いますよ」 GENKING.(40)が“身体も戸籍も女性になった現在” と“葛藤した過去”「私、ユニセックスじゃないのに」
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト