2019年3月10日、東京大学の2次試験・前期日程の合格発表(時事通信フォト)

2019年3月10日、東京大学の2次試験・前期日程の合格発表(時事通信フォト)

たとえ勉強ができても心の不器用な子は追い込まれると思考停止に陥る

 2018年度から理IIIは面接試験が復活した。一連のオウム真理教事件で理IIIはじめ多くの理系エリートがカルトにハマり犯罪に関与したこと、合格者に同じ私学の高校生が大半を占めたことなどをきっかけに1999年度から面接が導入されたが、2008年度から廃止されていた。

「東京大学受験指導の専門塾とかにいる『医者になる以上に理IIIに受かりたい』という受験マシーンを排除するためでしょう。もっとも、そういう塾はその対策もしてますが」

 日本中の一番勉強ができる子供たちが受けに来るだけに東大、とくに人の命を扱う医師や研究者を養成する理IIIとしては対応に苦慮していることが伺える。あくまで目的は医師養成なので当然だ。

「それでも受験エリートはまず東大を目指すんです。理IIIを目指すんです。それは社会も認めています」

 受験業界の長い彼の話なので極端に思えるかもしれないが、こうしたトップ校は存在し、なにがなんでも理IIIという親子は実在する。テレビも東大には「東大王」として「王」までつけている。社会もそれを受け入れている。むしろ煽っている。

 しかし彼もその危険は知っている。最後に教えてくれた。

「いくらトップ校でも、挫折のリスクヘッジを子供に作らない学校や親は危険です。勉強ができることと心の器用さは違います。たとえ勉強ができても心の不器用な子は追い込まれると思考停止に陥ります」

 また中学受験や高校受験の成功を過信するのは危険だという。

「大学受験とは別です。子供によっては中学(高校)受験まで、という極端な子もいます。遊びまくったとか勉強サボったでなく、ただ大学受験に向いてない子ですね。不思議なんですが、偏差値70超えの学校に入れたのに大学受験では中堅大学がやっと、なんて子もいるんです。そのときこそ『それなり』に落ち着くことを親も学校もサポートすべきですね」

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)ジャーナリスト、著述家、俳人。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。社会問題や生命倫理の他、日本のロジスティクスに関するルポルタージュも手掛ける。

関連キーワード

関連記事

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト