『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』の第1話扉絵
「編集者から、テーマが重く覚悟がいるため『作家が見つからない』と言われて、なかなか前に進みませんでした。もう諦めるかなと思っていたところ、親身になって連載先を探してくれる方に出逢って、2021年の6月頃にいまのチームでの連載が本格的に決まりました」(相澤氏)
「雅子さんが納得しなければ出しません」
とはいえ、このテーマを描くためには事件の背景や赤木さんの想いを十分に知る必要がある。そのため、2021年7月に、2泊3日で大阪・神戸をチームで巡った。
「まずは最も大事な場所である赤木さんが亡くなられた自宅に伺いました。俊夫さんの書斎や、ゆかりの品を見たり、雅子さんが用意してくれた食事をみんなで食べながら少しずつ理解を深めていきました。森友学園の建物や近畿財務局、赤木さん夫婦にとっての思い出の場所だった六甲山の展望台など作品には欠かせない場所を巡ることで、亡くなった俊夫さんの生活を“追体験”していった。すでに3話まで拝読しましたが、非常にリアリティがあり、その時の取材をもとにした場面が息づくように描かれていました」(相澤氏)
リアリティのある描写は時に雅子さんにとっては、過去をフラッシュバックさせてしまうリスクもあったが、編集チームの言葉で雅子さんもすべてを受け入れることができた。
「すでに作画に入っているタイミングだったと思うのですが、編集者の方から『雅子さんが納得しなければ出しません』と言ってもらえたことが大きかったですね。当然ながらショッキングなシーンが描かれることもありますが、実際に雅子さんが『ここは変えてほしい』と伝えたところはすべて反映してくれましたので、信頼してお任せすることができました」(相澤氏)
作品のタイトルにはあえて、森友学園の名前などショッキングなワードは入れなかった。
「このタイトルは、スタッフの皆さんと神戸を車で回っている時に出たものでした。『がんばれマサコちゃん』といった、俊夫さんが、雅子さんを応援しているようなタイトルが良いのでは――という案をきっかけに、車内が盛り上がったんです。私が雅子さんに、(ご夫婦の出身地である)『岡山県の言葉で“がんばれ”は何と言うんですか?』と聞くと、『がんばりょんかぁ、ですよ』と聞いて、その語感が妙にしっくりきたんです。色々な意見がありましたが、最終的にはそれが採用されました」(相澤氏)
相澤氏は、「これまで森友学園のニュースに興味がなかった人にこそ読んでもらいたい」と語る。