天才には天才の苦悩がある
何でもあっという間に理解できるギフテッドにとって、ほかの子供の理解度に合わせた授業は退屈そのもの。授業で習っていない公式を使うと誤答扱いされるような日本の学校ではなおさらだ。なかには、テスト中、すぐに問題を解き終えては隣の子にちょっかいをかけたり、本を読み始めたりして「落ち着きがない」「協調性がない」などと、高得点を取っているにもかかわらず、ほかの子より低く評価されることさえある。
「ギフテッドの子供たちは、知識習得のスピードが速いので、難しい言葉でしゃべったり、理屈っぽくなったりと、同年代の子とは話が合わないことが多い。“理解できないことが理解できない”のです。友達との会話にフラストレーションを感じても、その気持ちを、相手にわかるように伝えられない。
ギフテッドは、高い知的能力のほか、激しい感情や強い好奇心、感覚の激しさといった『過度激動』を示すのも特徴です。刺激に対して強いストレスを感じたり、正義感が強すぎて友達のちょっとした過ちをすぐ指摘してけんかになったり……周囲から浮いてしまい、学校で居場所がなくなる子は多い」(片桐さん)
将棋の藤井聡太竜王がかつて「どうして5分でわかることを45分もかけて教えるんだろう。授業がつまらない」と言っていたのは有名な話。藤井竜王がギフテッドという確証はないが、「理解が速すぎて授業自体に興味を持てなくなる」というのは、ギフテッドの特徴だ。藤井竜王は将棋に出合えたが、すべての神童が、自分の輝ける場所を見つけられるとは限らない。
「数学や物理などの世界には、計り知れないほどの神秘や楽しさ、美しさがあります。それなのに、学校ではカリキュラムに沿ったことしか教えず、授業中にそれ以上のことを勉強しようとするのは“ズルい”と言われる。そのうち、ストレスで髪の毛を抜くようになっていました」(太田さん・以下同)
太田さんは3人兄弟の次男。兄と弟はサッカー少年で、両親は「子供は遊びが仕事。のびのび育ってほしい」と考えるタイプ。一度数学の問題を解き始めたら徹夜するほど夢中になってしまう太田さんだったが、一方の両親は、一生懸命勉強することに大きな価値を見出さなかった。
「自分の個性をないがしろにされているように感じました。ぼくの好きなことを理解できなくても、否定はしないでほしかった。周りの人たちのIQがもっと高くて、自分のIQがもっと低ければいいのに、と思ったこともあります」
※女性セブン2022年2月3日号