利き手を矯正したことで、「日常生活のほとんどを右手で行なうようになった」という養老氏だが、“独特な感覚”を抱くようになったという。
「右利きに矯正されて困ったのは、漢字の『偏』と『つくり』を混乱するようになってしまったこと。たとえば、『短』という字は偏が『矢』でつくりが『豆』ですが、豆を左に、矢を右に書いても間違っているように見えないんですよ。どちらが正しいのか、いつまでたっても覚えられない(苦笑)」(養老氏)
「左利きは認知症になりにくい」という説もあるが、「左利きと右利きの人で脳に根本的な違いはないと思います。僕もだいぶボケてきましたよ」と語る養老氏。両手の握力は左右に差がないという。
「左利きの人は両手を使う場面が少なくない。だから僕の握力はずっと均等です。でも、いざという時に両利きでは具合が悪い。逃げる時には利き足から走り出すわけです。それは様々な事柄にも言えることで、昨今、フェミニズムの観点から男女平等が唱えられますが、夫婦でどちらの意見を優先するかを決めておかないと、いざという時にいちいち議論しなければならなくなる。それこそ“バカ”なことになってしまうと思います」
左右の脳をバランスよく鍛えられる“両利き”にも弊害があるとする意見である。
※週刊ポスト2022年2月11日号