スポーツ

札幌五輪「表彰台独占」日の丸飛行隊 栄光の影に隠れたヒーローたちの挫折

インスブルック五輪後に引退した笠谷幸生は1976年11月、コーチに転身。ニッカウヰスキーで働きながら、後進の指導にも当たった

インスブルック五輪後に引退した笠谷幸生は1976年11月、コーチに転身。ニッカウヰスキーで働きながら、後進の指導にも当たった(写真/共同通信社)

 半世紀前の1972年、札幌五輪70メートル級ジャンプで日本が金銀銅のメダルを独占した。しかしその後、世界の頂点を極めた“日の丸飛行隊”の前には、見えない壁が立ちはだかった。苦節26年、長野五輪での復活まで道のりは長く険しいものだった。【前後編の後編】

 光と影は常に交差している──。札幌五輪ジャンプ70メートル級で表彰台独占の快挙に沸く日本チームで、唯一落ち込んでいた男がいた。笠谷幸生に次ぐメダル候補に挙げられ、1本目に81メートルを飛んで4位に付けたものの、2本目で失速して23位に終わった藤沢隆である。当時“7人の侍”と呼ばれたジャンプメンバーの1人である板垣宏志氏が語る。

「その夜、コーチの部屋に集まって祝勝会をして、私も笠谷さんの金メダルを首に掛けさせてもらったりして、みんなで喜んでいました。でも、藤沢さんはその場にいなかった」

 日本中が余韻に浸る2月11日、“ジャンプの花形”90メートル級が行なわれた。夢の再現が期待される中、70メートル級銅メダリストの青地ではなく、板垣が出場した。

「たしかに公式練習では私のほうが飛んでいました。青地さんも『宏志、頑張れよ』と応援してくれた。選ばれたことに今も感謝しています。ただ、“メダリストの代わり”は大きなプレッシャーで、結果も19位でした」

 ヒーローの胸にも挫折が刻まれている。笠谷は1本目で2位につけたが、2本目に大倉山独特の突風に煽られて7位に沈んだ。試合後の「残念です」という一言に悔しさが滲んだ。大会後、表彰式やパーティーに出席するたび、金メダルの祝福とともに「90メートル級は惜しかったですね」と声を掛けられ、後悔は増幅した。次のインスブルック五輪で雪辱を期したが、メダルに遠く及ばず引退。同大会に出場した若狭実氏が振り返る。

「札幌の時と比べて合宿や海外遠征も減りましたし、どうしても自国開催の反動があったと思います」

関連記事

トピックス

鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
2才の誕生日を迎えた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
【9月6日で19才に】悠仁さま、40年ぶりの成年式へ 御料牧場、小学校の行事、初海外のブータン、伊勢新宮をご参拝、部活動…歩まれてきた19年を振り返る 
女性セブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
当時の水原とのスタバでの交流について語ったボウヤー
「大谷翔平の名前で日本酒を売りたいんだ、どうかな」26億円を詐取した違法胴元・ボウヤーが明かす、当時の水原一平に迫っていた“大谷マネーへの触手”
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
《同居女性も容疑を認める》清水尋也容疑者(26)Hip-hopに支えられた「私生活」、関係者が語る“仕事と切り離したプライベートの顔”【大麻所持の疑いで逮捕】
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
賭博の胴元・ボウヤーが暴露本を出版していた
大谷翔平から26億円を掠めた違法胴元・ボウヤーが“暴露本”を出版していた!「日本でも売りたい」“大谷と水原一平の真実”の章に書かれた意外な内容
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン