芸能

『カムカム』でトホホな男を演じるオダギリジョー、その独特で大胆な戦略

本作では脚本・演出・出演・編集までこなした(ABACA PRESS/時事通信フォト)

独特な存在感が魅力(ABACA PRESS/時事通信フォト)

 何にでも憑依するのが役者だが、一方で既にあるイメージを最大限活用する演出の手法もある。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が、評価の高い朝ドラについて分析した。

 * * *
 今や連続ドラマは1話、2話の走り出しが勝負と言われています。つまらないと思えば途中離脱は当たり前。話題にならなければチェックすらしてもらえず、時には録画していたことすら忘れられてしまう。動画配信には国内外のドラマや映画、スポーツとさまざまなコンテンツがズラリ揃い、好きな時に見られるという状況です。視聴者の限られた時間を奪い合う厳しい競争の中で、地上波ドラマも戦わざるをえません。

 その一方、ついつい画面に目が引きひきつけられ、気になって仕方ないテレビドラマもあるから面白い。クセになってやめられない。ある種の「中毒性」を引き起こす。それがNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で大月錠一郎を演じるオダギリジョーさん。もう毎朝、目が離せない。

 名トランペッターだった錠一郎は、突然のスランプに陥り音楽を諦めて良き家庭人となった。娘・ひなたが生まれると、娘の成長と共に父として一年生、二年生と少しずつステップアップを目指す。最初から完璧を求めない、マイペースな姿勢がいい。回転焼きも上手に作れないしお客さんの相手もできない。そんなふがいない自分を素直に受け止める父親ぶりがいい。

 特に、困った時の表情は印象的。眉毛はハの字になりトホホという吹き出しが目に見えるよう。情けない表情にこうも味がある役者さんって、オダギリさんをおいて右に出る人はいない。声を張り上げず何ごともふわりと柔らかく受け止める。「柔よく剛を制す」という言葉を地で行くような錠一郎が、独特の味わいを出しています。演じているオダジョーがピタリとハマッて実に自然体。

 そんなオダギリさんも、当初は朝ドラ出演のオフォーに戸惑っていたとか。「インディーズや小さな作品に重きを置いて活動して来たので、“朝ドラ”は自分らしくないかなとだいぶ悩みました」(「シネマトゥディ」2021.1/11)。制作陣が一ヶ月かけて説得した、という記事も見ました。

『カムカムエヴリバディ』で注目すべき点とは、今回の錠一郎という役がオダギリさんへの「当て書き」だということでしょう。脚本家・藤本有紀さんの役者選びの慧眼、そして当て書きの手腕にはひれ伏したくなる。見事な筆さばきです。

関連記事

トピックス

ミニから美脚が飛び出す深田恭子
《半同棲ライフの実態》深田恭子の新恋人“茶髪にピアスのテレビマン”が匂わせから一転、SNSを削除した理由「彼なりに覚悟を示した」
NEWSポストセブン
保育士の行仕由佳さん(35)とプロボクサーだった佐藤蓮真容疑者(21)の関係とはいったい──(本人SNSより)
《宮城・保育士死体遺棄》「亡くなった女性とは“親しい仲”だと聞いていました」行仕由佳さんとプロボクサー・佐藤蓮真容疑者(21)の“意外な関係性”
NEWSポストセブン
(左から)豊昇龍、大の里、琴櫻(時事通信フォト)
綱取りの大関・大の里 難敵となるのは豊昇龍・琴櫻よりも「外国出身平幕5人衆」か
週刊ポスト
セ・リーグを代表する主砲の明暗が分かれている(左、中央・時事通信フォト)
絶好調の巨人・岡本&阪神・サトテルと二軍落ちのヤクルト村上宗隆 何が明暗を分けたのか
週刊ポスト
過去のセクハラが報じられた石橋貴明
とんねるず・石橋貴明 恒例の人気特番が消滅危機のなか「がん闘病」を支える女性
週刊ポスト
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(写真は2019年)
《広末涼子逮捕のウラで…》元夫キャンドル氏が指摘した“プレッシャーで心が豹変” ファンクラブ会員の伸びは鈍化、“バトン”受け継いだ鳥羽氏は沈黙貫く
NEWSポストセブン
大谷翔平(左)異次元の活躍を支える妻・真美子さん(時事通信フォト)
《第一子出産直前にはゆったり服で》大谷翔平の妻・真美子さんの“最強妻”伝説 料理はプロ級で優しくて誠実な“愛されキャラ”
週刊ポスト
「すき家」のCMキャラクターを長年務める石原さとみ(右/時事通信フォト)
「すき家」ネズミ混入騒動前に石原さとみ出演CMに“異変” 広報担当が明かした“削除の理由”とは 新作CM「ナポリタン牛丼」で“復活”も
NEWSポストセブン
万博で活躍する藤原紀香(時事通信フォト)
《藤原紀香、着物姿で万博お出迎え》「シーンに合わせて着こなし変える」和装のこだわり、愛之助と迎えた晴れ舞台
NEWSポストセブン
川崎
“トリプルボギー不倫”川崎春花が復帰で「頑張れ!」と声援も そのウラで下部ツアー挑戦中の「妻」に異変
NEWSポストセブン
最後まで復活を信じていた
《海外メディアでも物議》八代亜紀さん“プライベート写真”付きCD発売がファンの多いブラジルで報道…レコード会社社長は「もう取材は受けられない」
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《“イケメン俳優が集まるバー”目撃談》田中圭と永野芽郁が酒席で見せた“2人の信頼関係”「酔った2人がじゃれ合いながらバーの玄関を開けて」
NEWSポストセブン