悲劇の結末を彩る悲壮美に満ちていた
――その場合の血の色も難しいですよね。赤過ぎると嘘っぽくなったり、残酷になったりします。本作では少し黒味が入り、雪とのコントラストが抜群でした。
白石:鮮血といいますか、「赤い血」の方向には作らないようにしました。ちょっとどす黒いというか、それが作品全体のトーンにも合っていたので。カットによっては黒く見え過ぎる部分もあるのですが、そういうカットは血の量を増やして「血」だと認識できるようにしたり、明るく見える部分は量を減らして細かいしぶきをメインにするなど、カットによってバランスを調整しました。
ただ黒くするだけだと陰影がどんどんなくなってしまうので、暗い中でもちゃんとハイライトを入れています。ハイライトがないと、平面的というか乾いた感じになってしまいます。
――血というのは生命感も必要ですからね。
白石:ちゃんと斬られて血が出た、というシズル感といいますか。微妙な差ではあるのですが、生々しさをリアルに追求するためにそこも細かくやりました。
聞き手・文/春日太一(かすが・たいち)/1977年生まれ、東京都出身。映画史・時代劇研究家。
【プロフィール】
白石哲也(しらいし・てつや)/株式会社Spade&Co.VFXディレクター。映画・テレビドラマのVFXを担当。代表作は『るろうに剣心』シリーズほか、『マスカレード・ホテル』『孤狼の血』『全裸監督』ほか多数。
※週刊ポスト2022年2月11日