芸能

映画『るろうに剣心』実写だから描けた「ランダムな血しぶきの動き」

VFXディレクターの白石哲也氏(撮影/藤岡雅樹)

VFXディレクターの白石哲也氏(撮影/藤岡雅樹)

 2021年に公開された映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』(大友啓史監督)における「血しぶき」の創作秘話を、時代劇研究家の春日太一氏がVFXディレクターの白石哲也氏に聞くシリーズ。

 同作の決闘シーンにおける血しぶきは時代劇史上でも屈指の美しさだったが、それは何パターンもの「噴き出る血」の実写素材を撮影し、それを後で各シーンに合成する──という、アナログ的な手法によって作られていた(全3回の第2回。第1回は【映画『るろうに剣心』衝撃の血しぶきシーンはどう作られたか】。本稿は作品の展開に関して明らかにしている内容が含まれています)。

 * * *
白石:血を足すということにおいては、ゼロから3DCGで作ることもできます。ただ、実際に斬られて血が出る──その重力とか噴き出し方とかは実際に飛ばしてみて、それにライトを当てて、そのシーンの雰囲気に合うように撮るのが一番クオリティが高いですし、コストもかからないんです。

 ゼロからやると、シミュレーションして試行錯誤しているうちに時間がどんどん経ってしまう。それで上手くいけばいいんですが、それでリアルに見えなくなることが一番怖いわけです。大爆発シーンなどはCGでないと難しい場合も多いですが、その時の煙とか火の粉とかは実際に撮ったものを使った方がいい。噴き出す血も同じです。

――たしかに、それらは人間の予想できないランダムな動きをしますからね。

白石:CGで作るとどうしても動きをこちらでコントロールすることになるので、ランダムな動きの綺麗さとかリアルさがなかなか出しにくいんですよね。

──「雪の上を血が流れる」という描写も印象的でしたが、あれも素材を撮ったのでしょうか。

白石:雪の上を血が流れていく場合、単純に壁とか床とかの平面に血を垂らして撮っても「雪に染み込んだ血」という表現ができないと思いました。それで、雪っぽい質感の素材を敷いた上から血を流しています。

――雪の中に染みていくこともあるわけですからね。血の流れも、やはりランダムということになる。

白石:雪には凹凸感があるので、そこを通ることによって血の表情も変わっていきます。その辺のリアリティは求めましたね。何もない平坦なところに血を流しちゃうと、そういう微妙な細かい表現が出なくて。

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン