対立はフィクションか
田原:だけど、安倍さんと岸田さんが対立関係にあるというのは、マスコミが面白がって作り上げたフィクションなんですよ。
藤井:そうなんですか。
田原:安倍さんが官房長官だったころ、私は「総理になったら、小泉首相が壊した日中関係を修復するのがあなたの役割で、まず胡錦濤(当時の国家主席)に会うべきだ」と提言した。それで安倍さんは総理になって、外務大臣に起用した岸田さんに、「胡錦濤に会えるように手配してくれ」と頼んで、日中首脳会談が実現したんです。日中関係を修復したのは安倍さんなんですよ。
藤井:なるほど。岸田さんは安倍内閣で外務大臣を非常に長く務めていたので、思想的に共有している部分はあるでしょう。
田原:別に対立しているわけではない。
藤井:ただ、岸田さんの場合は、昔ながらの日本的外交と言いますか、対立を避けようという姿勢が目立ち、これが台湾有事のリスクを高めている。佐渡金山の世界文化遺産登録でも、過剰に韓国に配慮したり、あるいは対中非難決議においても、「非難」や「中国」という言葉を削ったりして、中国を怒らせたくないという弱腰な姿勢を見せています。
総裁選のときに、中国は高市さんを激しく非難しましたが、岸田さんに対しては何も言及しなかった。岸田さんのほうが都合がいいと考えているからです。
(第3回につづく)
【プロフィール】
田原総一朗(たはら・そういちろう)/ジャーナリスト。1934年滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業。岩波映画製作所、テレビ東京を経て1977年フリーに。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。近著に『自民党政権はいつまで続くのか』など。
藤井聡(ふじい・さとし)/元内閣官房参与・京都大学大学院教授。1968年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(公共政策論、都市社会工学)。京都大学工学部卒、同大学院工学研究科修士課程修了後、スウェーデン・イエテボリ大学心理学科客員研究員、東京工業大学教授を経て、現職。第二次安倍内閣で内閣官房参与。近著に『日本を喰う中国』など。
※週刊ポスト2022年2月18・25日号