ラグビー新リーグ発足のために尽力した谷口真由美氏
僕が「ラグビー界の改革の旗手」として期待していた谷口さんは、新リーグの開幕を待たずして、2021年の6月にラグビー協会のすべての役職から退いてしまった。「新リーグ法人準備室長・審査委員長」という重職に就いていて、新リーグ立ち上げにもっとも尽力していた人だったのに。周囲からも「谷口さんはよくやっている」と聞いていただけに、「一体何が起こっているのか」と驚きましたよ。
谷口:ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。2020年1月、私が新リーグ法人準備室長に就任した際にご挨拶に伺ってから、川淵さんにはいつも気にかけてもらっていました。
「困ったことがあったらなんでも連絡してきていいよ」と、すぐに電話番号を交換してくださいましたし、その後は「大変だろうけど頑張って」と何度も励ましのメールをいただきました。くじけそうになったときに、いつも救われましたね。そのご厚意に十分なかたちで応えることができず、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
川淵:いやいや、谷口さんが謝ることじゃない。だけど、僕は本当にあなたに期待していたし、どんなことでも協力を惜しまないつもりでいたからね。ご存じのように、僕はサッカーのJリーグ(1991年スタート)や、バスケットボールのBリーグ(2015年スタート)の立ち上げに関わってきたけれど、そんな立場から見ても、ラグビーの新リーグ創設はそれ以上に困難な大仕事です。
そもそもラグビー界は他のスポーツと比べても突出した「男社会」で、門外漢が立ち入りにくいところがある。そんなイメージが強いのに、ラグビー協会は新リーグの責任者に女性を選んだ。だからこそ、僕は「ラグビー協会は本気で古い体質を変えるつもりだな」と感じたんです。谷口さんには、ぜひ女性ならではの細やかさや、男性では気がつかないような視点でラグビー界を改革してほしかった。
でも、どうやらラグビー界の「壁」はまだまだ厚かったようだね。僕が知る限り、谷口さんは必死で頑張っていたし、周囲からの評価も期待も高かった。しかし、その一方で、ラグビー協会内も、リーグに参加する企業・チームも、あなたの意見を素直に受け入れるような雰囲気ではなく、孤立無援で大変そうだという噂も耳にしました。
やはりラグビー界を動かすのは至難の業だった?