谷口:正直、大変でしたね。協会はジェンダーギャップ是正の観点から「とりあえず女性を」と私を責任者に選んだのかもしれませんが、本気で改革に臨もうという気概をもった方はごく一部でした。さきほど川淵さんがおっしゃったように、日本ラグビー界はラグビーワールドカップ2019の成功を機に、競技人口とファンを増やして世界に負けない土壌を作っていかなければいけないはず。

 ですが、実際は「ワールドカップも成功したし、現状維持でいいじゃないか」と考えている人がラグビー界に驚くほど多かったんです。それを実感したのが、新リーグのディビジョン分け審査で各チームの担当者と接したときのことでした。

 皆さんに「新リーグはこれから10年先、20年先の日本ラグビー発展のための第一歩。そのために各チームにぜひ協力していただきたい」と話しても、「現状を変える意味がわからない」と取り合ってもらえないことが多かったんです。なかには「我々は企業の士気高揚の一環としてやっているので、中途半端に口を出されると会社幹部の機嫌を損ねる」というような内向きな言い方をされる担当者もいました。

 とくに現役を引退し、各企業でサラリーマンとしてラグビー部の部長さんやGM(ジェネラルマネージャー)など管理職を務めている元選手の方に、そういった変化を嫌う考え方が多かったように思いました。そのために、改革も志半ばで終わってしまったところがあります。

(後編に続く)                   

※『おっさんの掟~「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』より抜粋。2021年10月、日本サッカー協会にて取材。

【プロフィール】

川淵三郎(かわぶち・さぶろう)/1936年大阪府生まれ。早稲田大学在学時にサッカー日本代表に選出。1964年東京五輪に出場。日本代表監督などを経て、1991年Jリーグ初代チェアマン、2002年日本サッカー協会会長に就任。現在は同協会相談役。

谷口真由美(たにぐち・まゆみ)/1975年大阪府生まれ。法学者。大阪芸術大学客員准教授。専門は国際人権法、ジェンダー法など。「全日本おばちゃん党」を立ち上げ、テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍。2019年6月、日本ラグビーフットボール協会理事に就任。2020年1月にラグビー新リーグ法人準備室長に就任。その後新リーグ審査委員長も兼任するが、2021年2月に法人準備室長を退任。6月に協会理事、新リーグ審査委員長も退任。著書に『おっさんの掟~「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』など。

 

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