ビト本人に尋ねた。
「伊東さんは、股関節の手術後、リハビリ病院で歩行器を使って歩けるまでには回復していました。ですが、それもリハビリ病院での話です。1人での生活となると、トイレに行くのもままならない状態で、伊東さん本人や父親、それと生活保護を受給していたので区の担当者と話し合いを重ねて、施設に入所することになりました。それが約2年前、コロナが流行りだす直前でした」(ビト)
支援金の用途と周囲に説明できなかった理由を問うと、次のように話した。
「支援金のことでは、連絡をいただいた方に“みなさんによろしくお伝えください”とは話しましたが、自分から個々にお礼を言えていなかったのは申し訳ないと思います。お金は、股関節の手術費用や脳梗塞の治療費、転院を繰り返したリハビリ病院の費用、あとは自宅の家賃や光熱費の支払い、引っ越し費用などに充てさせてもらいました。
伊東さんの状況を説明できなかったことについては、申し訳なく思っています。伊東さんが入所していると知られると多方面に迷惑がかかるだろうということで、施設側とも口外しないように約束していました。なによりも、伊東さん本人が以前“入院したり施設に入ったら、誰にも会いたくないから言ってほしくない”と話していたことがあったんです。それでうまく説明できないままになってしまって…」(ビト)
ビトにとっても苦渋の選択だったことが伝わってくる。最後に、エスパーの近況について聞いた。
「コロナもあって、施設に入ってからは一度も直接の面会ができていません。2月2日に施設の方のスマホを使って、LINE通話で顔を見ることができました。椅子に座ってグレーのトレーナーを着て、入所したころより顔がふっくらして顔色もよく見えましたし、白髪交じりの髪もさっぱりと切っていて元気そうに見えました。ただ、表情は少し乏しかったですね。言葉も出しにくいようでした。今回のニュースを事前に知っていたようで、“誰に会いたい?”と聞いたら“南部さんに会いたい”って言ったんですよ」(ビト)