何が起こるかわからないのが4年に1度の大舞台、オリンピックの怖ろしさかもしれない。しかも今回は、“疑惑”を纏った「魔物」が跋扈する。
世界中が固唾を呑んで見守る大一番で、“穴”につまずくというアクシデントに見舞われた男子フィギュアスケート・羽生結弦(27)をはじめ、今回の北京五輪は予測不能のトラブルが相次ぐ。
羽生は、ショートプログラムの最初のジャンプ、4回転サルコウの直前にリンクの溝にはまり、1回転ジャンプとなって8位と大きく出遅れた。演技後、「何か悪いことしたのかな」「氷に嫌われた」と苦笑した。成功すれば世界初となる4回転アクセルは失敗に終わり、94年ぶりの3連覇は幻に終わったが、ISU公認大会で初めてジャンプの種類として認定された。
金メダルを期待されたスキージャンプ混合団体の高梨沙羅(25)は、1回目で103メートルの大ジャンプを記録したが、直後にスーツ規定違反でまさかの失格。日本は4位まで追い上げたものの、無情な裁定に国内外で議論が巻き起こった。
6大会連続出場のスノーボード女子パラレル大回転・竹内智香(38)は、レース中、同走のドイツ人選手を妨害したとして途中棄権扱いで敗退。抗議したものの審判員のほとんどがドイツ人だったためか、判定が覆ることはなかった。
スノーボード女子スロープスタイル・芳家里菜(22)は、開会式前日となる2月3日の公式練習中に転倒、脊椎損傷の大怪我を負い、大会欠場に追い込まれた。人工雪による雪面の“異常な硬さ”が要因と指摘されている。
一方、中国人選手に有利な判定が多いことに、世界から疑惑の目が向けられている。ショートトラック男子1000メートルでは、準々決勝から決勝まで2位だった任子威が、疑惑の判定で繰り上げ金メダルになり物議を醸した。
誰もが認める絶対王者が重圧から実力を発揮できないなど、毎回様々なドラマが生まれるオリンピックには「魔物が棲む」と言われる。だが、今回ばかりはアスリートの内に潜む何者かではない“見えざる魔物”が跳梁跋扈する4年に一度の祭典になった。
※週刊ポスト2022年3月4日号