江戸時代の暴君、異常性欲の持ち主の耽美派小説家、素朴な炭焼職人、偏屈な天才ベートーヴェン、フランス革命期の死刑執行人・・・・・・。稲垣の演じてきた人物は振り幅が相当大きいのに、どの役もハマリ役と絶賛された。

 パブリックイメージをぶち壊して進みながら、パブリックイメージにまた立ち戻れる。稀有な俳優と言えるのではないか。

 話を舞台に戻そう。長年、ステージを見続けてきたファンにとっては、そんなのあたりまえでスルーされるのかもしれないが、初見の立場にしてみたら、それ、すごいことですよ!!といちいち感激したくなることがかなりあった。

 例えば、稲垣が歌いながら舞台上の階段を上って下りるシーンがある。それが何か? と思われるかもしれないが、では、1曲の間、階段の上り下りだけで間を持たせて、と言われたらどうやってできるだろうか。誰もがそんな簡単にできることではない。

 歌いつつ自然に動きをつけながら、そのシーンの状況や感情まで表現する。それも長年ステージに立ってきた経験がベースにあるから、いくらでも引き出せるのだろう。

 また、劇中、稲垣にとってあるチャレンジが必要な演出があった。彼のキャリアとポジションなら、プレッシャーを自分にかけることをわざわざ取り入れなくてもすむのに。でも敢えて挑む姿勢が、同性から見てもかっこいい。

 そんな思いや、ストーリー自体もいまの時代だからこそ感じ取れる部分もあり、観終わった後、気づいたらまさかの涙が流れていた。

 今回のようなきっかけがなかったら、自分はたぶん一生、稲垣吾郎のパフォーマンスを生で観る機会もなかったろう。来てよかった。テーマ曲が脳内に流れる中、心地よい気分で帰途についた。

ミュージカル・コメディ『恋のすべて』2月27日まで、東京建物Brillia HALL(東京・池袋)で公演中

ミュージカル・コメディ『恋のすべて』2月27日まで、東京建物Brillia HALL(東京・池袋)で公演中

(舞台写真)撮影・田中亜紀

 

関連記事

トピックス

バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
三浦瑠麗(本人のインスタグラムより)
《清志被告と離婚》三浦瑠麗氏、夫が抱いていた「複雑な感情」なぜこのタイミングでの“夫婦卒業”なのか 
NEWSポストセブン
ドラマ『Believe -君にかける橋-』で木村の妻役で初共演
初共演・天海祐希もハイテンションに! “木村拓哉の相手役”が「背負うもの」と「格別な体験」
女性セブン
オフの日は夕方から飲み続けると公言する今田美桜(時事通信フォト)
【撮影終わりの送迎車でハイボール】今田美桜の酒豪伝説 親友・永野芽郁と“ダラダラ飲み”、ほろ酔い顔にスタッフもメロメロ
週刊ポスト
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン