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西郷輝彦さん、10年間のがんとの闘い 全摘出、再発、転移、抗がん剤治療、海外へ

西郷輝彦さんはがん治療を受けていた

西郷輝彦さんはがん治療を受けていた

 その訃報はファンや芸能関係者だけでなく、多くのがん患者にとってもショッキングなことだった。2月21日、西郷輝彦さんの所属事務所が、《西郷輝彦に関するご報告》と題した文書を発表した。

《これまで西郷輝彦を応援してくださった皆様にご報告させていただきます。西郷輝彦(本名:今川盛揮)が長きにわたり、前立腺がんとの闘いの末、去る令和4年2月20日午前9時41分、75歳にて都内の病院にて永眠いたしました。ここに生前のご厚誼を深く感謝いたしますとともに、謹んでお知らせ申し上げます》

 西郷さんを知る芸能関係者が明かす。

「昨年の春、西郷さんは末期がんの最先端治療を受けるためにオーストラリアに渡りました。治療が功を奏し、8月には“がんが消えた”と奥様と一緒に大喜びしていたんです。『24時間テレビ』(日本テレビ系)でもその様子を報告し、多くのがん患者を勇気づけました。ただ、それから彼の近況は聞こえなくなりました。その後の検査結果が芳しくなく、治療方針の変更を余儀なくされたためです」

 この半年間、西郷さんの身に何が起きていたのか──。

 鹿児島県生まれの西郷さんは、1964年に『君だけを』でデビュー。『涙をありがとう』『星のフラメンコ』などのヒット曲で人気を集め、橋幸夫(78才)、舟木一夫(77才)とともに「御三家」と呼ばれた。1973年にはドラマ『どてらい男』(フジテレビ系)で主演し、俳優としての活動も本格化。『江戸を斬る』(TBS系)などの時代劇から、近年は『ノーサイド・ゲーム』(TBS系)などの人気ドラマのほか、映画や舞台でも活躍していた。

 そんな彼の前に立ちはだかったのが、前立腺がんだった。最初に発見されたのは2011年だったが、当時は病気を公表することなく、極秘のうちに前立腺を全摘出。だが、6年後の2017年11月に再発が発覚した。背中に激痛が走り、検査をしたところ、医師から告げられたのは非情の宣告。「骨への転移」だった。あまりの進行の速さに、主治医は緩和ケアをすすめたが、西郷さんは完治を諦めず、積極的な治療を選んだ。その日々はまさに“死闘”と呼べるものだった。

「抗がん剤治療によって髪の毛がどんどん抜けていったのです。猛烈な吐き気などにも襲われ、壮絶な闘病生活が続きました。それでも西郷さんは治療と仕事を両立させていた。その不屈の精神力には本当に頭が下がりました」(テレビ局関係者)

 だが、病魔は確実に西郷さんの体を蝕んでいった。昨年春、医師から「ステージ4」の深刻な状況だと宣告されたのだ。その頃、すでに国内での標準治療はほぼ試みていた。それでも西郷さんは日本においては未承認の治療法を探し出し、一縷の望みをつないだ。選んだのは「PSMA治療」というもの。前立腺がんの治療に詳しい、くぼたクリニック松戸五香の泌尿器科専門医・窪田徹矢さんが解説する。

「前立腺がんの標準治療を受けたにもかかわらず、転移したり進行したりしている患者のための治療法です。基本的には、ルテチウムという薬剤を静脈に注射するだけ。体に負担がかかりにくい治療だとされています」

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