他とは明らかに違う異物感アップへ
両作を同時期に演じることで生まれる相乗効果はいくつか考えられますが、最も期待したいのは、菅田さんが醸し出す“異物感”がこれまで以上に増していくこと。どこまでも偏屈な久能整、まっすぐでピュアな源義経と、まったく異なるキャラクターながら、「ともに天才肌で、我が道をゆくため周囲から浮いてしまう」という異物感は共通しています。
そんな異物感は“特別感”と言い換えることもできるだけに、菅田さんの演技を日曜・月曜と立て続けに見た視聴者が魅了されるのは当然でしょう。売れっ子とは言え、2夜連続で2局の看板ドラマ枠に出演するのは異例であり、それでも「出すぎ」「飽きた」などと思わせない演じ分けが称賛を集めるのではないでしょうか。
菅田さんは「菅田くんありきの作品だから」「他の人ではダメなので絶対に出てほしい」と請われる形でのオファーが多いようですが、今回の2役でますます作り手たちの制作意欲をかきたてる存在となるでしょう。たとえば、原作アリなら「こんな異物感の漂う主人公を演じられるのは菅田将暉しかいない」、オリジナルなら「菅田将暉の異物感をどのように生かそうか」と思わせる俳優なのです。
演技で魅了しているため忘れられがちですが、菅田さんは昨年11月に小松菜奈さんと結婚したばかりの新婚。「感性の鋭い菅田さんなら、プライベートの変化が演技にいい影響を及ぼすのではないか」という期待の声もよく聞きますし、今回の2作に限らず、まずは30歳の誕生日を迎える来年2月までの1年間で、どんな進化を見せてくれるのか楽しみです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。