国内

茂木健一郎氏が受験システムに警鐘「塾や予備校はいらない。ゼロでいい」

教育評論家の尾木直樹氏と脳科学者の茂木健一郎氏が緊急対談

教育評論家の尾木直樹氏と脳科学者の茂木健一郎氏が緊急対談

 東大前刺傷事件や大学入学共通テストでのカンニングなど、受験をめぐるトラブルが相次いでいる。教育現場ではいったい何が起きているのか。教育評論家の尾木直樹氏と脳科学者の茂木健一郎氏が緊急対談した。【全4回の第4回。第1回 第2回 第3回を読む】

 * * *
尾木:本当に大事なのは、基礎的な学力は必要かもしれませんが、「大学でこれを学びたい」「将来こういう仕事をしたい」という意欲であって、大学側の「こういう学生が欲しい」という要望とマッチングさせることです。

茂木:それを壊しているのが受験産業です。私は科学者ですから、科学の世界でどういうスキルが求められるかをよく知っています。AIやビッグデータなどで使われる数学やプログラム能力なんて、塾でくだらない受験指導を受けても身につかないですよ。英語力を上げたければ、TOEICなど含め英語のテストを全廃することです。

 先日、塾の先生と話していてびっくりしたんですが、小5までに小6のカリキュラムを終わらせて、その後、深掘りするんだって。早く終わったなら先に進めばいいのに。

尾木:ああ、中学で学ぶ内容は、中学受験に必要ないですからね。

茂木:そうそう。本当にくだらない。時間の無駄。

尾木:だから、日本も欧米と同じようにAO入試だけにすればいいんです。

茂木:欧米のAO入試は何時間も、場合によっては何日も面接をして合否を決める。優秀な生徒には大学側がオファーを出すこともある。ペーパーテストの点数で上から取るという日本の入試は、むしろ手抜きです。お金も手間もかけていない。

尾木:欧米に比べて日本は教育に予算をかけていないので、入試にお金や人員を割けないという問題もありますけどね。

茂木:中学受験や塾、予備校という文化が全くない国はあります。アメリカでも聞いたことがない。じゃあ、そういう国と比べて、日本では生きる力やイノベーションを起こす力の高い人たちが出てきているのかといえば、全くそんなことはない。はっきり言いますが、私は塾や予備校はいらないと思う。ゼロでいい。

尾木:受験システムの背景にあるのは、我が子の就職を心配する親の気持ちだと思います。現実問題、学歴による就職差別はありますし、だからこそ親は塾に入れていい大学に行かせようとします。

 それは理解できますが、今、就職という発想自体が変わりつつあります。企業に就職するのではなく、学んだことや研究をもとに自ら起業したりして仕事を「創ろう」と考える学生が増えてきています。大きく儲けられはしないけど、収入になるならいいやと。私たちの時代には出てこなかった発想です。そうすると、学歴信仰も変わってくるんじゃないでしょうか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン