──モノクロの写真でタイトルが赤だと『仁義なき戦い』のイメージになってしまいますからね。
中平:赤系統でないとデザインが成立しないとは思っていたのですが、ピンクにすれば赤とは異なるニュアンスになりますし、生々しさが消えるという意識はありました。
──怖さや生々しさを避けようという意識もあったわけですね。
中平:当初はもっとハードなイメージのデザインも作っていました。ジョニー・トー監督の撮った香港のノワール映画のような。
「これで行こう」と決定寸前になっていたところ、宣伝担当の女性たちから「怖すぎる」という感想が上がりまして。やくざ映画ですからメインターゲットは男性でしたが、女性の方に怖すぎて引かれてしまってはよくないと思い、方向転換していくことになりました。
◆聞き手・文/春日太一(かすが・たいち)/1977年生まれ、東京都出身。映画史・時代劇研究家。
【プロフィール】中平一史(なかだいら・かずし)/株式会社Viemo代表取締役。アートディレクター、グラフィックデザイナー。『BROTHER』及び『TAKESHIS’』以降の北野映画のポスターやタイトルデザイン等を担当。
※週刊ポスト2022年3月11日号