ビジネス

「社員をバカにする社長」は日本経済を腐らせる一因なのではないか

2019年2月、日本商工会議所、東京商工会議所が中小企業経営者向けに開催したパワハラ・セクハラ対策セミナー(時事通信フォト)

2019年2月、日本商工会議所、東京商工会議所が中小企業経営者向けに開催したパワハラ・セクハラ対策セミナー(時事通信フォト)

 マニュアル製作専門会社のグレイステクノロジー株式会社が、繰り返された粉飾決算のために2月28日で上場廃止となった。それに先だって公表されていた特別調査委員会の調査報告書により、過大な設定予算を達成させるためのパワハラが横行していたことが明るみに出た。これらの問題は2021年に急逝した創業者である元会長が主導していたことも報告書で認定されていた。同社のように、創業社長や会長によってパワハラが常態化する職場は規模の大小を問わず少なくない。俳人で著作家の日野百草氏が、いまだに幅をきかせている経営者、幹部の社員に対するパワハラ、私物化と侮辱についてレポートする。

 * * *
「クライアントに『うちの使えない連中(社員)を教育してやってください』って、信じられませんよ。うちの会社、ヤバいと思いました」

 元ベンチャーIT企業の営業マン(30代)の言葉に筆者は「まだそんな経営者がいるのか」とウンザリした。いま彼は大手モバイルゲームの関連会社に転職したが、そのIT企業の社長は自分の会社の社員をバカにする癖があったという。それも他社に向けて、である。

「謙遜や相手企業を持ち上げるためかもしれませんが、逆に印象悪いですよ」

 もっともな話で、「では、御社には使えない社員しかいないのですか」と言われかねない。ビジネスの場なので面と向かって言わないにせよ、脳内ではそう思われているかもしれない。実際、社員の教育を満足にしないまま「現場主義」と称して他社との仕事に社員教育を委ねて野に放つ経営者は少なくない。かつて一世を風靡したフリーペーパー発行会社の広告営業がそれだった。それすら迷惑なのに、まるで私物のように社員をクライアントの前で侮辱する経営者や役員、上司がいる。これもまたパワハラ、モラハラの類だろう。

「言われるこっちも悲しいですし、やめて欲しいです」

 素朴な感情だがまっとうな思いである。仮にバカにしてはいないとしても、社員に対する過小評価や貶めての謙遜、その放言は企業風土を悪化させる。

「いまだにいますよね。ああいう経営者とか、幹部とか、なんででしょうね」

 もちろん、会社や業界それぞれの問題で、全部に当てはまらないと言われればそれまでだが、筆者はこういう会社、エンタメ業界をはじめ何社も知っている。たとえば、

「うちはろくな声優いないですけど、彼女は凄いですよ」

 こんなことを言う幹部のいる声優事務所があった。20年以上前の話、幹部といっても小さな事務所で役員もマネージャーも兼ねている、という体だったが、その男は一人を売り込むために事務所の所属声優をバカにした。ありえない感覚で、常識の通用しないその感覚が逆に怖かったことを覚えている。事務所はとっくに潰れ、その「彼女」の表立った仕事歴も2010年前後で途絶えている。別の派遣会社の女性の話、

「派遣会社でもそういう営業はいます。その人を売り込みたい一心なんでしょうけど、ちょっとどうかと思います。社長クラスでもいます」

 こういった話は別の中小規模の警備会社で聞いたことがある。そこはもっとひどくて「うちには貧乏人しか来ない」と社内に撒き散らす社長がいたという。そのまま受け取るなら社長は「貧乏人のボス」になってしまうが、自分でおかしいと思わないのだろうか。巨大企業でもあるまいし、最終的に採用を決めたのは社長自身のはずだ。また当然ながら、社員(隊員)がどう思うか考えないのだろうか。ここまでくると「モンスター社長」である。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト