警察は動かない。現金回収も困難
美穂さんがマッチングアプリを始めたのは昨年5月。夫と離婚して子供2人を育て上げ、知人の誘いでビジネスの場を東京に移して1年が過ぎた頃だった。
「恋人が真剣に欲しいというより、できたらいいなという思いでした」(美穂さん)
登録した日に、「ポール」という56才の外国人男性とマッチングが成立した。筋肉質で髪は短く、彫りの深い顔立ち。国籍は「フランス」で居住地は「東京」、職業は「金融系」と記されていた。すぐにLINEでのやり取りに移行し、親しくなった。ポールからの返信は、翻訳機能を使った日本語だった。
《このソフトを使って間もなくあなたのような優しい女の子に出会うとは思いませんでした!》
マッチングから数日後には彼からこんな話が飛び出した。
《ポールは外国為替取引をしています。コロナで経済は影響を受けましたが、投資業界は上昇傾向にあります》
そして仮想通貨への投資を持ち掛けられる。最初は半信半疑だったが、ポールの指示で練習の「模擬取引」をしてみると、利益が出た。ポールからのメッセージも、
《きみを愛している》
《永遠に一緒にいたい》
などと愛情表現がエスカレート。その気にさせられた美穂さんは、仮想通貨取引所に口座を開設し、現金100万円を投入する。
《私たち2人の家を買うことができると思います》