そんなポールの口車にも乗せられ、美穂さんは投資額を増やしていく。途中で50万円の利益が通帳に還元されてさらに信用してしまい、会社の存続のために受けたコロナ融資800万円、友人たちから借りた金もつぎ込んだ。
それでもポールから「元金が足りない」とせがまれた。「これ以上は出せない」と断ると、ポールから美穂さんの仮想通貨の口座に「5200万円を送金しました」とメッセージが入り、投資額が一気に増えた。そこで異変が起きる。
《僕のお金が出金できなくなった。引き出すために美穂は2700万円を振り込まなければならない》
投資額の大きさにすでに怖くなっていた美穂さんはもはや、正常な判断ができなくなっていた。
「要求額を支払わないとポールが出金できず、私は犯罪者になってしまうのか」
美穂さんは親族に借金を申し出て、2700万円を調達。それでも一向に出金できないどころか《税金を支払ってください》と追加請求が続いたため、ようやく目が覚めた。4600万円は仮想通貨の口座からいつの間にか消えてしまい、挙げ句、ポールは壊れたレコードのように《お金を返してください》と繰り返すのみ。警察に駆け込むもすべては後の祭りだった。
「ポールと知り合ったのは、新しい仕事が不調で、胃潰瘍になって精神的にも参っていたときでした。私は人を信じやすく、おまけにポールとのやり取りは楽しかったので、現実逃避してしまったのかもしれません……」(美穂さん)
その代償はあまりにも大きい。親族への借金返済のために車やパソコンを売却。さらに日々の食費も節約するなど苦しい生活を強いられている。