「石田ゆり子の姿が重なって見える」との声も
『おちょやん』でも見せた“一貫性”
本作は、堤や蒔田、神木に吉田らの“受けの演技”や、石田が貴恵という力強いキャラクターを作り上げ視聴者に印象付けていることによって、毎田と周囲の関係性が成立していると思う。また、石田と毎田の姿を重ね合わせるような映像演出の効果も大きい。しかし、ここに毎田暖乃というピースがハマらないと、すべてが崩れてしまう作品でもあるのは間違いない。貴恵の人格が宿った万理華は強い主体性を持ったキャラクターであり、他の者たちとの掛け合いが噛み合わなければ、どちらかが空回りしてしまう。先輩俳優たちの演技力でカバーできるものではない。その点で毎田は非常に大きな責任を担い、それに応えているのだ。
毎田の子役としてのキャリアは、まだ3年にも満たない。それでいて本作以外にも、朝ドラ『おちょやん』(NHK総合)という代表作があり、杉咲花(24才)扮するヒロインの幼少期を演じていた。朝ドラでは正ヒロインが登場することによって、その幼少期を演じた子役の印象がどこかへ消えてしまうことが少なくないように思う。しかし、毎田の場合は杉咲が登場してからも、「あの子がこんなふうに成長したのか」と感じ入る瞬間が多々あった。役柄的にインパクトがあった面もあるが、毎田が演じたヒロインの幼少期の姿と杉咲が演じる成長した姿には、納得の“一貫性”が感じられたのだ。演じるセンスも素晴らしいのだろうが、脚本の読解力にも長けているのだろう。
『妻、小学生になる。』では毎田の真価が発揮されている。石田が演じる貴恵との一貫性があり、さらには対面する相手との関係性に合わせて複雑に変化させてもいる。改めて、本作の白石万理華がいかに難役なのかを思い知らされるというものだ。毎田暖乃はもはや子役にあらず。名優顔負けの高い表現力を持った俳優である。
【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。